高卒認定試験科目別攻略法~理科です。各科目へは以下のリンクでどうぞ。 科学と人間生活 ・ 地学基礎 ・ 生物基礎 ・ 化学基礎 ・ 物理基礎
①植物の生育と光 光合成:光エネルギーを利用して、水や二酸化炭素などの無機物からデンプンなどの有機物をつくる。CO2+H2O+光エネルギー→有機物+O2 葉緑体:クロロフィルという緑色の色素(光合成色素)を含み、光合成を行う。 光補償点(ひかりほしょうてん):二酸化炭素の吸収と放出の量が等しくなり、見かけ上、二酸化炭素の出入りがなくなる時の光の強さ。光補償点より強い光がないと植物は成長しない。 光飽和点(ひかりほうわてん):光補償点より光が強くなると光合成速度がさらに増加していき、やがて一定になる時の光の強さ。 光合成速度:見かけの光合成速度(計測された二酸化炭素の吸収速度)+呼吸速度(呼吸による二酸化炭素の放出速度) 陽生植物:ヒマワリやタンポポのように、日なたを好んで生育する植物。光補償点が高く、光飽和点も高い。 陰生植物:アオキとイヌシダのように、日陰でも生育できる植物。光補償点も光飽和点も低い。 陽葉:日当たりのよい所にでき、葉は分厚い。 陰葉:日当たりの悪い所にでき、葉は薄い。 光発芽種子(ひかりはつがしゅし):タバコやレタスなどのように、地表がある程度明るい場合にのみ発芽する種子。光発芽種子の発芽に最も有効な光は赤色光(波長580~700mm)であり、逆に遠赤色光(波長730mm)では発芽を抑制する。 屈性:刺激に対して一定の方向へ屈曲する性質。 正の屈性:刺激源の方へ屈曲する性質。 負の屈性:刺激源の反対に屈曲する性質。 正の光屈性:暗所や弱い光のもとで成長を始めた植物が、光の強い方へ茎を曲げながら成長する現象。光が当たらない側の茎の細胞が光の当たる側の細胞よりもよく成長することによって生じる。 成長運動:細胞や器官の不均等な成長によって生じる運動。 花芽(かが):花になる芽。花芽形成は日長(にっちょう、昼の長さ)の変化の影響を強く受けており、多くの植物は決まった季節に開花する。 光周性(こうしゅうせい):生物が日長の変化に応じて一定の反応を示す性質。 長日植物(ちょうじつしょくぶつ):春から夏にかけて日長が長くなる時期に開花する。コムギ、アブラナ、ホウレンソウ、カーネーションなど。 短日植物(たんじつしょくぶつ):夏から秋にかけて日長が短くなる時期に開花する。イネ、キク、ダイズ、アサガオ、オナモミ、コスモスなど。 中性植物:日長に関係なく開化する。トマト、トウモロコシ、セイヨウタンポポなど。 花芽形成の仕組み: (1)花芽形成に重要なのは明期(光の当たる期間)の長さよりも暗期(真っ暗な期間)の長さである。 (2)短日植物は連続した暗期が一定時間より長くなると花芽を形成し、長日植物は連続した暗期が一定時間より短くなると花芽を形成する。 限界暗期:花芽を形成するかしないかの境界となる暗期の長さ。 光中断(ひかりちゅうだん):暗期の効果を失わせる光照射。 長日処理:夜間、植物体に人工的に光を照射して、連続した暗期を短くすること。短日植物であるキクに秋に長日処理を行って花芽形成を遅らせ、一定の時期に処理を止めると、ちょうど正月頃に開花させることができる。また、長日植物であるカーネーションに温室内で長日処理をすると、冬に開花させることも可能である。 短日処理:夕方や朝に植物体を遮光するなどして暗期を長くすること。短日植物であるキクを夏の早い時期から短日処理すれば、開花を早めることができる。 ②ヒトの視覚と光 感覚器官:感覚機能を持つ器官。眼は光刺激を受け取る器官であり、眼の網膜には光に反応する感覚細胞が並んでいる。 視覚:光に対する感覚。光を感じた視細胞からの情報は、視神経を通して脳の視覚中枢へ伝えられ、視覚が生じる。 こう彩:カメラの絞りのように開閉して、眼に入る光量を調節する。 網膜:カメラのフィルム(デジタルカメラの場合は撮像素子)に相当し、視細胞で光を受容する。 水晶体:凸レンズとして働き、光線を屈折させて網膜上に像を結ばせる。ヒトは水晶体の厚さを変化させることにより、光の曲がり方を変えて、遠近調節をしている。 近点(きんてん):ピントを合わすことができる最も近い点。近点と水晶体の距離が近点距離である。 錐体細胞(すいたいさいぼう):網膜にある視細胞の1種で、明るい場所で色に反応する。網膜の中心部に多い。 桿体細胞(かんたいさいぼう):網膜にある視細胞の1種で、薄暗い場所で明暗に反応する。網膜の周辺部に多い。 黄斑(おうはん):網膜の中心部。黄色に見える。 暗順応:明るい場所から急に暗い場所に入ると、最初は真っ暗で何も見えないが、やがて慣れて見えてくるようになる。桿体細胞の感度が上がることによる。 明順応:暗い場所から急に明るい場所に出ると、最初はまぶしいが、やがて桿体細胞の感度が低下し、普通に見えるようになる。 盲斑:網膜の中にある、視神経が集まって眼球から出て行く部分。視細胞がないため、光を感じることができない。 錯視:長さや配置などが実際とは異なったものに見えてしまう現象。 ③動物の行動と光 走性:刺激源に向かったり、逆に逃げたりする動物の行動。 光走性(ひかりそうせい):光に対する走性。 正の走性:刺激源に向かう走性。 負の走性:刺激源から遠ざかる走性。 生物リズム:一定の周期で繰り返す活動のリズム。 概日リズム(サーカディアンリズム):ほぼ24時間の周期で繰り返すリズム。 体内時計(生物時計):生物体内にある、一定のリズムを保つ仕組み。 ④微生物の存在 微生物:肉眼では見えず、顕微鏡を使用して初めてその存在が分かる生物。 レーウェンフック(オランダ):1674年に自作の顕微鏡を使って、始めて微生物を発見した。 パスツール(フランス):1861年に「白鳥(スワン)の首」と呼ばれる形にしたフラスコを使った実験で、「生物は親なしに無生物から自然に発生する」という自然発生説を否定した。 コッホ(ドイツ):肉汁をゼラチンで固めた固形培地をペトリ皿に作り、これを用いて様々な細菌を培養して分離することに成功した。その後、多くの研究者が病原体となる微生物を発見し、感染症の原因究明が進んだ。 感染症:微生物や寄生虫などの感染により引き起こされる病気のこと。 ⑤生態系における微生物 生態系:生物とその周りの環境を一まとまりにしてとらえたもの。 自然浄化:河川において有機物などを含む汚水が流入すると、その量が少ない内な大量の水で希釈されたり、微生物が分解したりすることなどにより、有機物による水の汚染は改善される。 活性汚泥法(かっせいおでいほう):好気性微生物によって有機物を水と二酸化炭素等に分解する排水処理法。 ⑥微生物と人間生活 発酵:炭水化物が微生物により無酸素的に分解されること。 発酵食品:みそ、しょう油、ビール、ワイン(ブドウ酒)、清酒、パン、チーズなど。 腐敗:タンパク質などの窒素を含む有機物が、微生物により主に無酸素的に分解されること。 抗生物質:微生物によって作られ、他の微生物などの細胞の生育や機能を阻害する物質。 ワクチン:特定の感染症を予防するための物質で、病原性微生物の病原性を弱めたものや失わせたもの、病原性微生物が作り出した毒素を弱めたものなどから作られる。 遺伝子組換え:人工的に遺伝子の新しい組み合わせを造ること。 バイオマス:化石燃料を除く、生物由来の有機物のこと。 バイオメタン:バイオマスを原料として作られたメタン。 バイオエタノール:バイオマスを原料として作られたエタノール。
①食品の科学 三大栄養素:炭水化物、タンパク質、脂質。 五大栄養素:三大栄養素+無機塩類(ミネラル)、ビタミン。 炭水化物(糖類):炭素C、水素H、酸素Oの3種類の元素からできている。動植物の体を作る重要な物質であり、エネルギー源として必要なものである。 高分子化合物:デンプン分子のように、小さな分子が何百、何千と繰り返し結合してできた、大きな分子の化合物。 ヨウ素デンプン反応:デンプンにヨウ素溶液を加えると、青~青紫色になる。 タンパク質:生体組織の主要な成分であり、炭素・水素・酸素・窒素・硫黄などを成分に持つ高分子化合物。タンパク質を分解すると、アミノ酸が得られる。 必須アミノ酸:ヒトのタンパク質を構成している20種類のアミノ酸のうち、体内では合成することができないもの、または必要量を合成しにくいもの。 変性:タンパク質の構造が変化すること。 ペプチド結合:アミノ酸2分詞は、一方の分子中の-COOHと-NH2との間で水1分子が取れて結合することができ、この時に生じる結合-CONH-を言う。 ポリペプチド:アミノ酸が次々とペプチド結合してできた高分子化合物。 酵素:タンパク質でできており、生体内の複雑な化学反応が体温程度の温度でも速やかに進むのは酵素の働きによる。1種類の酵素は特定の物質の特定の反応にしか働かず、それぞれの酵素には最もよく働く温度(35~45℃)と最もよく働くpH(5~8)がある。 脂質:代表的なものに油脂があり、油脂は生体内に広く存在し、エネルギー源になったり、皮下脂肪として体温を保つのに役立ったりしている。油脂はグリセリン1分子と脂肪酸3分子からできており、グリセリンは水に溶けやすいが、脂肪酸は水に溶けにくいものが多い。 脂肪酸:多くの炭素原子が鎖状に結合したもので、分子中に-COOHの構造を持つ。分子中に-CH=CH-の構造を持つものを不飽和脂肪酸、含まないものを飽和脂肪酸と言い、飽和脂肪酸は動物性油脂、不飽和脂肪酸に多く含まれる。 食品添加物:食品の製造や加工、保存のために添加される物質。保存料、酸化防止剤、着色料、発色剤、漂白剤、甘味料、殺菌剤などがある。 ②衣料の科学 繊維:衣料として用いられる繊維には、天然繊維と化学繊維がある。天然繊維は主に植物繊維(木綿など)と動物繊維(羊毛、絹など)に、化学繊維は再生繊維(レーヨンなど)、半合成繊維(アセテートなど)、合成繊維(ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリルなど)に分けられる。 染料:繊維の染色などを目的として用いられる色素。天然染料と合成染料に分類される。 アゾ染料:分子中に-N=N-の構造を持つ染料で、合成染料の代表的なもので、その種類は非常に多い。 媒洗剤(ばいせんざい):アルミニウムイオンや鉄(Ⅲ)イオンなどの金属イオンを含み、色を定着させる薬品。 セッケン:油脂に水酸化ナトリウム水溶液を加えて熱すると生じる脂肪酸のナトリウム塩。親水性部分(水になじみやすい部分)と親油性部分(疎水性部分、油になじみやすい部分)がある。 硬水(こうすい):カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを多く含む水。セッケンの親水性部分はカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどと反応して、水に溶けにくい塩を作るので、セッケンは海水や硬水では泡立ちが悪くなる。 界面活性剤(かいめんかっせいざい):セッケンのように親水性と親油性の2つの部分を持つ物質。 合成洗剤:界面活性剤に様々な化合物を添加したもの。 漂白剤:洗剤では落とせない黄ばみやしみを落とすのに用いられる。 ③プラスチック プラスチック(合成樹脂):人工的に作られた高分子化合物(合成高分子化合物)のうち、樹脂状のもの。繊維状のものは合成繊維と言う。プラスチックは熱に対する性質から、熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)と熱硬化性樹脂に分類される。 原油:地中から天然に産出された石油で、炭素と水素からできている炭化水素を中心とする、いろいろな有機化合物(有機物)の混合物。 単量体(たんりょうたい、モノマー):合成高分子化合物を作る時に結合させるエチレンなどの小さな分子。 重合(じゅうごう):単量体が次々に結合する反応。重合には付加重合や縮合重合(しゅくごうじゅうごう)などがある。 重合体(じゅうごうたい、ポリマー):重合してできた高分子化合物。 縮合:単量体の2つの分子から水H2O分子のような簡単な分子が取れ、新しい結合が形成されて、1つの分子が生じること。 生分解性プラスチック:使用中は通常のプラスチックと同じように使え、使用後は自然界の微生物の働きで水と二酸化炭素に分解されるプラスチック。 ④金属 金属の性質:金属には特有の光沢があり、叩くと薄く広がる性質(展性)や引っ張ると長く延びる性質(延性)があり、また、電気や熱をよく伝える(導体)。これらは金属の中を自由に動く電子(自由電子)が多く存在し、金属中の原子同士がこの自由電子によって結びついているためである。 軽金属:密度が4g/cm3以下の金属。マグネシウム、アルミニウムなど。 重金属:密度が4g/cm3より大きい金属。亜鉛、鉄、銅、銀、金など。 合金:2種類以上の金属を融解して混ぜ合わせた後、凝固したもの。 貴金属:金、銀、白金など。空気中でさびにくく、光沢を失わないので、古くから装飾品や硬貨などに使われてきた。 銑鉄(せんてつ):溶鉱炉に鉄鉱石などを入れ、出てきた鉄は銑鉄と呼ばれる。不純物としての炭素を多く含み、もろい。 鋼(こう、スチール):少量の炭素を含んだ鉄。純粋な鉄は灰白色でそれほど固くないが、少量の炭素を含むと固くなる。銑鉄を転炉に移して不純物の炭素を酸素と反応させ、炭素の含有量を低くすると、強度や耐熱性の高い鋼となる。 銅の電解製錬:銅は銅鉱石の還元で得られる粗銅(不純物を多く含む銅)を陽極、純銅を陰極として、硫酸銅水溶液を電気分解して製造する。この時、陽極の粗銅から溶け出た銅(Ⅱ)イオンが陰極に銅となって析出する。 イオン化傾向:金属が水溶液中で陽イオンとなる性質の強さ。金属原子は電子を失って陽イオンになりやすく(酸化されやすい)、イオン化傾向の大きい金属ほど酸化されやすい。 さび:鉄はさびやすく、湿った空気中で酸化されると、赤さび(主成分は酸化鉄(Ⅲ))を生じる。 めっき:鉄がさびるのを防ぐために、表面を別な金属で覆ったもの。 ⑤セラミックス セラミックス:セメントやガラス、陶磁器、耐火物などのように、無機物質(無機物)を高温に熱して作られた固体材料。窯業製品(ようぎょうせいひん、窯で焼いてできる製品)。 無機物質:有機化合物以外の、炭素を含まない物質のこと。二酸化炭素、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどは炭素を含むが、無機物質に分類される。 セメント:水を加えると固くなるセラミックスで、一般には建築用材料に広く用いられているポルトランドセメントのことを言う。 ガラス:現在、最も広く使われているガラスは、けい砂(主成分は二酸化ケイ素)、炭酸ナトリウム、石灰石(主成分は炭酸カルシウム)などの原料を融解して作るソーダ石灰ガラスである。二酸化ケイ素の純度が高いガラスを石英ガラスと言い、耐熱ガラスとして使われたり、特に純度の高いものは光ファイバーや水晶振動子として使われたりしている。二酸化ケイ素の純度が高い石英ガラスに水酸化ナトリウムを加えて熱すると、ケイ酸ナトリウムが生じるが、ケイ酸ナトリウムはガラス状の固体で、水を加えて熱すると粘性の大きい水ガラスになる。水ガラスに塩酸を加えて加熱脱水するとシリカゲルが得られ、シリカゲルは水蒸気などを吸着する性質を持つので、乾燥剤などに利用されている。 アモルファス:結晶構造を持たない物質の状態。ケイ素や二酸化ケイ素の結晶は原子が規則正しく並んだ構造でできているが、不純物を含んでいるガラスは不規則な構造のまま固体となったものである。 陶磁器:粘土と水をよく練って成形し、乾燥してから窯に入れ、700~900℃で焼いたものが土器、1100~1200℃で焼いたものが陶器、1300~1500℃の高温で焼いたものが磁器である。磁器には完全に吸水性がなく、洋食器をはじめ、多くの食器類に用いられている。 ファインセラミックス(ニューセラミックス):酸化アルミニウム(アルミナ)や炭化ケイ素などの人工的に合成または高純度にした無機物質を原料とし、精密な反応条件の下で焼き固めたもの。
①光とは何か 媒質:波を伝える物質。光も音も振動が次から次へと伝わる波の一種だが、音は真空中では伝わらないのに対し、光は真空中でも伝わる。 横波:各部分の振動方向と波の伝わる方向が垂直になっている波。光は横波である。 縦波:各部分の振動方向と波の伝わる方向が同じ波。音は縦波である。 波長:横波の隣り合う山と山(または谷と谷)の距離。 振幅:波の山の高さや谷の深さ。 周期:波がやってきてから次の波がやってくるまでの時間。1周期の間に媒質は1回振動する。 振動数:1秒間当たりの媒質の振動する回数。単位はヘルツ(Hz)。 v=fλ(ラムダ) f=(波の速さv、波の振動数f、波の波長λ、波の周期T) 反射の法則:異なる物質の境界面に光が入射すると反射が起こり、入射角i=反射角jという関係がある。入射角は入射光が境界面の垂線となす角度、反射角は反射光が境界面の垂線となす角度である。 乱反射:普通の物体の表面はごく細かい凹凸が多いため、物体の表面に当たった光は様々な方向に反射される。 屈折の法則:異なる物質に光が進むと、物質の境界の所で反射と屈折が起こる。物質Ⅰから物質Ⅱへ光が入射する時、入射光が物質Ⅰと物質Ⅱの境界面の垂線となす角度を入射角i、屈折光が境界面の垂線となす角度を屈折角rとすると、次のような関係がある。 =n(nは一定、nは物質Ⅰに対する物質Ⅱの相対屈折率と言う) 絶対屈折率(屈折率):光が真空中から物質中に進む時の屈折率。屈折は光の進む速さが物質によって異なるために生じる。 n=屈折率nの物質中を進む時の光の速さv、真空中の光の速さ) 全反射:屈折率の大きい物質から小さい物質に光が進む時、入射角より屈折角の方が大きくなり、屈折角がちょうど90°になるような入射角を臨界角と言うが、入射角が臨界角より大きくなると、光は全て反射して屈折光はなくなる。全反射を利用した光ファイバーは内視鏡や光通信用ケーブルなどで利用されている。 凸レンズ:中央部が周辺部より厚くなっているレンズ。光軸(レンズの軸、レンズの両側の球面を形作る2つの球の中心を結ぶ直線)に平行な光は外側ほど光線が大きく屈折して、凸レンズを通った後、後方の焦点に集まる。レンズの中心から焦点までの距離を焦点距離と言う。物体から出て凸レンズを通る光線の道筋は、次のような性質がある。 (1)レンズの光軸に平行に進む光線は、レンズを通過後、レンズの後方の焦点を通る。 (2)レンズの前方の焦点を通過した光線は、レンズを通過後、光軸に平行に進む。 (3)レンズの中心に向かう光線は、そのまま向きを変えずに直進する。 実像:物体から出た光線が実際に集まってできた像。物体がレンズ前方の焦点の外側にある時には実像ができる。 虚像:あたかも像から光が出ているかのように見えるが、実際には光線が集まっていない像。物体がレンズ前方の焦点の内側(レンズ前方の焦点とレンズとの間)にある時には虚像ができる。 凹レンズ:中央部が周辺より薄くなっているレンズ。 カメラの構造:カメラは凸レンズを利用して、フィルムや撮像素子(デジタルカメラで受けた光を電気信号に変換する素子)の位置に像を結ぶ構造になっている。レンズは前後に動くようになっていて、物体までの距離に合わせて、フィルムや撮像素子からの距離を調整できるようになっている。絞りはレンズを通過する光の量を調節し、シャッターはフィルムや撮像素子に光が当たる時間を調節する。 ヒトの眼の構造:ヒトの眼は凸レンズに対応する水晶体を持ち、フィルムや撮像素子の位置に対応する場所には、光に反応する感覚細胞が並んだ網膜がある。水晶体はカメラのレンズのように前後に動くことはできないので、その厚さを変化させて焦点距離を調節し、網膜上に像を結ぶ。カメラの絞りに対応するのがこう彩であり、明るさに応じて瞳孔(どうこう)の大きさを調節している。 ②光の性質 可視光線:ヒトの眼で感じることができる光。 白色光:太陽光や白熱電球などから出る白い光。 スペクトル:赤、橙(だいだい)、黄、緑、青、紫の順に並んだ光の帯。 光の分散:光が波長の違いによって分離する現象。 光の散乱:光が粒子に当たった時、粒子の大きさが光の波長と同じくらいか、それより小さいと、光は元の進行方向以外に、その粒子を中心としてあらゆる方向に向かって進んで行く。 波の回折(かいせつ):波が障害物の裏側に回り込む現象。 波の干渉:波長や周期の等しい波を2点から送り出すと、山と山(谷と谷)が重なって強め合う位置と、山と谷が重ねって弱め合う位置が交互に規則的に現れてくる現象。 回折格子(かいせつこうし):板ガラスの片面に、1cm当たり数百本の細い平行な溝を等間隔につけたもの。 連続スペクトル:赤から紫までの光が連続しているスペクトル。 線スペクトル:特定の波長(色)の光だけを含んでいるスペクトル。 赤外線:可視光線よりも波長の少し長い光。 紫外線:可視光線よりも波長の少し短い光。 光の三原色:赤、青、緑。 加法混色(かほうこんしょく):赤、青、緑の組み合わせで様々な色を表現する方法。 色の三原色:青を吸収する絵の具(イエロー)、赤を吸収する絵の具(シアン)、緑を吸収する絵の具(マゼンタ)。 減法混色(げんぽうこんしょく):色の三原色による混色の方法。 偏光(へんこう):一定の振動方向を持つ光。 偏光版:一定方向に振動している光だけを通過させる板。 ③電磁波とその利用 電磁波:光の速さで電気的・時期的な振動が空間を伝わる波。光(可視光線)も電磁波の一種である。 ④熱とは何か 熱平衡:温度の高い物体と温度の低い物体を接触させて長い時間放っておくと、やがて同じ温度になる。 熱平衡温度:熱平衡の状態の温度。 ブラウン運動:微粒子の周りから多数の分子が衝突することにより、微粒子が微小細動しながら移動していく。 熱運動:原子・分子の乱雑な運動。 セルシウス温度(セ氏温度、単位記号℃):1気圧で氷が溶ける(融解する)温度を0℃、水が沸騰する温度は100℃と定め、その間を100等分したもの。 絶対零度:-273℃。これより低い温度はない。 絶対温度(熱力学温度、単位記号K〔ケルビン〕):-273℃を基点(絶対零度)に取り、セ氏温度の温度目盛りと間隔を等しく取った温度目盛り。 T=t+273(絶対温度T、セ氏温度t) 熱:高温の物体と低温の物体との間で出入りして、温度変化の原因となる熱運動のエネルギー。 熱量:熱の量。単位はジュール(記号J)。 熱容量:物体の温度を1℃だけ上昇させるのに必要な熱量。単位記号J/℃。熱容量C〔J/℃〕の物体の温度をt〔℃〕上昇させるのに必要な熱量Q〔J〕は、Q=Ctで表される。 比熱(比熱容量):単位質量(例えば1g)の物質を1℃だけ上昇させるのに必要な熱量。単位記号J/(g・℃)。比熱c〔J/(g・℃)〕の物質でできた質量m〔g〕の物体の温度をt〔℃〕だけ上昇させるために必要な熱量Q〔J〕は、Q=mctで表される。比熱c〔J/(g・℃)〕の一種類の物質だけでできた質量m〔g〕の物体の熱容量C〔J/℃〕は、C=mcで表される。 熱量の保存:高温の物体から出た熱量は、低温の物体に入った熱量に等しい。 カロリー(記号cal):1gの水の温度を1℃だけ上昇させるのに必要な熱量。カロリーを用いると、水の比熱は1cal/(g・℃)となる。1cal=約4.2J。 消費電力(電力):電気器具にかかる電圧と流れる電流の積。その電気器具が1秒間に電気エネルギーをどれだけ消費するかを表す。抵抗R〔Ω〕に一定の電圧V〔V〕をかけ、一定の電流I〔A〕が流れる時、抵抗での消費電力P〔W〕は、P=VIで表される。 消費電力量:時間t〔s〕の間に消費する電気エネルギーU〔J〕は、U=VItで表される。 ジュール熱:抵抗に電流が流れると、消費電力量だけのエネルギーが熱運動のエネルギーに変わる。 熱伝導:物体の内部で、ある原子・分子が熱運動によって隣の原子・分子をより激しく動かすことにより、熱が温度の高い方から低い方へ移動する現象。 対流:液体や気体が流動する現象。液体や気体の温度が場所によって異なる時、普通、温度が高い部分は熱膨張によって周りより密度が小さいため、上に動き、温度が低い部分は周りより密度が大きいため、下に動く。 熱放射:物体が光や赤外線などの電磁波をだすことにより、熱が周りに移動する現象。 ⑤エネルギーの利用 化学エネルギー:化合物が持つエネルギー。 発熱反応:熱を出す化学反応。 吸熱反応:周りから熱を奪って、化合物が持つ化学エネルギーが増加する化学反応。 エネルギー保存の法則:エネルギーは変換されても、その種類を変えるだけで、根ルギーの総量は増減しない。 熱機関:熱を使って仕事をする機械。 熱効率:熱機関に与えた熱量Q1〔J〕に対する仕事W〔J〕の割合。熱機関の熱効率e〔%〕は、e=×100またはe=×100で表される。 不可逆変化:熱はひとりでに高温の物体から低温の物体に移動するが、低温の物体からひとりでに高温の物体に移動することはない。 コージェネレーション:蒸気タービンで発電した際、排熱を回収して給湯や冷暖房に利用し、高い総合効率を得るシステム。 ハイブリッドカー:ガソリンで動くエンジンと電池で動くモーターの2つの動力装置を持つ自動車。 ヒートポンプ:低温の所から高温の所に熱を移動させるために使われる装置。
①太陽系の中の地球 天動説:地球が宇宙の中心にあり、太陽や月、惑星、そして恒星が地球の周りを回っているという考え。 地動説:恒星と太陽は静止していて、地球や惑星が太陽の周りを回っているという考え。 天文単位:太陽系の中の天体の距離を表す単位。1天文単位=太陽と地球の平均距離(約1億5000km)。 地球型惑星:水星、金星、地球、火星。固体の表面を持ち、半径が小さく、密度の大きい惑星。 木星型惑星:木星、土星、天王星、海王星。水素やヘリウムなどからできていて、固体の表面を持たず、半径が大きく、密度の小さい惑星。 クレーター:表面に小天体が衝突してできた地形。 大赤斑(だいせきはん):木星の表面に見られる大気の渦。 ②太陽と人間生活 光球(こうきゅう):太陽の光を出している約500kmの気体の層。 黒点:光球の中に見られる黒い点。周囲に比べて温度が低く、暗いため、黒く見える。 彩層(さいそう):太陽のピンク色の薄い層。 コロナ:彩層の外側に広がる真珠色の部分。 プロミネンス(紅炎):彩層から出ている炎。 太陽風:コロナから加速されて宇宙空間に流れ出している電気を帯びた粒子の流れ。 フレア:黒点近くの彩層が突然明るく輝く現象。 磁気あらし:フレアが発生すると、太陽風の粒子の数や速度が増加し、地磁気(地球の磁気とそれによる磁場)も影響を受け、一時的に大きく変化する現象。 オーロラ:電気を帯びた粒子が地球の大気中に入り、酸素や窒素などの分子や原子とぶつかって発光させる現象。オーロラは磁気あらしが起こった時に高緯度地方によく出現する。 太陽放射:太陽表面からは可視光線のほか、それより波長の短い紫外線や、波長の長い赤外線などが放射されている。 太陽定数:地球の大気圏上面で、太陽光線に垂直な1m2の面が1秒間に受ける日射量。約1.4kW/m2。 ③天体の運行と人間生活 天球:多数の星をのせた、地球を中心とする半径が無限大の仮想の球。 1恒星日(こうせいじつ):天球(恒星)の日周運動の周期。地球の自転周期。23時間56分04秒。 天の北極:天球が回転する中心に当たる北側の点。 天の南極:天の北極と正反対の南側の点。天の北極と天の南極は、地球の自転軸の延長が天球と交わる点。 天の赤道:天球の中心を通って、天の両極を結ぶ線に直行する平面が天球と交わってできる大円。 1太陽日(たいようじつ):太陽の日周運動の周期。1恒星日より約4分(3分56秒)長い。1太陽日が1恒星日より長いのは、太陽が1日に約1°天球上を西から東へ移動しているように見えるためである。 黄道(こうどう):天球上で太陽が移動していく道筋。黄道面は地軸の傾きのため、赤道面に対して約23.4°傾いている。 1太陽年:天球上の太陽の動きは、地球の公転による見かけの動きであり、太陽は365.2422日で黄道を1周する。 視太陽時(したいようじ):太陽が天の子午線上にある時、つまり太陽が南中する時を12時とし、太陽が子午線から西へ15°ずれた時が13時というように、太陽が15°ずれる時間を1時間として決めた時刻。 平均太陽時:天の赤道上を1年の周期で一定の速さで運行する仮想の太陽(平均太陽)を考え、この平均太陽の動きから決めた時刻。 均時差:視太陽時から平均太陽時を引いたもの。 日本標準時:兵庫県の明石(あかし)を通る東経135°の平均太陽時。 世界時:イギリスのグリニッジ(経度0°)の平均太陽時。日本標準時は世界時より9時間進んでいる。 原子時:原子から出る電波を使って決めた時間。セシウム原子から出る特定の電波が振動する回数で1秒を決めている。 協定世界時:原子時に平均太陽時を加味したもの。 うるう秒:協定世界時の1秒の長さは原子時と同じだが、地球の自転速度が一定ではないため、平均太陽時との差が一定の値を超えると、うるう秒を加えたり、引いたりして、差が1秒以下になるように調整するもの。 太陽暦:太陽の動きを基準にした暦。 ユリウス暦:ユリウス・カエサルがエジプト暦を参考にして制定した暦。 グレゴリオ暦:ローマ教皇グレゴリオ13世が定めた暦。新暦。西暦年数が4で割り切れる場合はうるう年とするが、西暦年数が100の倍数になる場合は、400の倍数でない限り、うるう年としない。現在ほとんどの国で用いられている。 太陰暦:月の満ち欠けの周期(朔望月〔さくぼうづき〕)に基づく暦。エジプト以外の多くの国で用いられていた。 太陰太陽暦:1年は太陽の周期で表し、1か月は月の満ち欠けで表す暦。旧暦。 ④地震による景観と災害 地表地震断層:地震発生時にずれが現れた断層。 海岸段丘:海岸で過去に波の浸食作用を受けた平らな面が、地震のたびに隆起を繰り返して段になった地形。 河岸段丘(かがんだんきゅう):川沿いで土地が隆起すると、川は河床(かしょう)を削り込んで低くなり、元の川原が段になって河岸段丘ができる。 活断層:最近数十万年間に繰り返し活動した証拠があり、将来もずれる可能性のある断層。 プレート:地球の表面を覆う、厚さ数十~200kmほどの10数枚の岩石の固い板。 プレートテクトニクス:プレートが1年に数~10cmというゆっくりした速さで移動し、プレートが衝突する所では長い時間をかけて山脈を造ったり、地震や火山を起こしたりするといったように、地球表層の活動をプレートの動きで説明する考え方。 海嶺(かいれい):プレートが生まれて、両側へ離れていく所。海底山脈を形成。 海溝(かいこう):プレートが沈み込む場所。海底に細長い窪地ができている。 火山前線(火山フロント):火山の分布の海溝側の限界線。 震度:地震動(土地の揺れ)の強さの程度を表す尺度。 マグニチュード:地震の規模を表す尺度。 本震:一連の地震の中で、最も大きな地震。 余震:本震の後の地震。 余震域:余震の起こった地域。 液状化現象:河川沿いや埋立地など、地盤が砂地の所では、地震動で砂層が液体のように軟弱になる現象。 津波:地震に伴い、海底で急激で大規模な地盤の隆起や沈降が起こると、周期が数十分、波長が数百kmもの波が生じる。 ⑤火山の景観と災害 溶岩円頂丘(ようがんえんちょうきゅう、溶岩ドーム):粘性の大きな溶岩が流出してできたもの。昭和新山など。 成層火山:溶岩と火山砕屑物(さいせつぶつ)が交互に積み重なってできたもの。浅間山など。 盾状火山(たてじょうかざん):粘性の小さな溶岩が噴出してできたもの。ハワイ・マウナロア山など。 カルデラ:大爆発によって火山の中央が陥没したもの。阿蘇山など。 火山噴出物:火山の噴火によって、地表に運び出された物質。溶岩・火山ガス・火山砕屑物に大別される。 溶岩流:マグマそのものが火口から流れ出るものであり、粘性の小さいマグマで発生する。 火砕流(かさいりゅう):マグマから作り出された火山灰や火山岩塊などの火山砕屑物、火山ガスが混合して、山の斜面を高速で流れ下るもの。急速に膨張すること、流れ下る速さが時速数十~100km以上になることなどから、人々の避難が間に合わず、大災害を引き起こすことがある。 泥流:火山活動の活発化によって、付近に堆積した軽石や火山灰などが河川の水をせき止め、その決壊によって、あるいは噴火の際に山頂の雪氷が融けることによって、発生する。 ⑥流水の作用による景観と災害 V字谷(ブイじたに):山岳地域は傾斜が急で、水流が速いので、水による浸食作用が強く、一番低い所に集中して働くので、川底を掘り下げる下方浸食が進み、V字谷となる。 扇状地:細い谷口から扇状に堆積物が広がった平地。 三日月湖:平地を流れる河川の曲がった部分では、外側は流速が速くなるために浸食が進み、内側は流速が遅くなるために堆積が起こるので、曲がり方が激しくなり、河川は蛇行するようになる。蛇行が進むと、増水時などに曲がった部分が取り残されて、三日月形の湖になる。 氾濫原:平野の河川は洪水時にたびたび氾濫し、河川の周辺に土砂が堆積して、傾斜が緩やかな土地ができる。 三角州(さんかくす):河川が海や湖のような水流のない所に注ぐ所で、河川の流速が遅くなるために、土砂を運搬する力が弱まり、土砂が堆積して三角州が形成される。 山崩れ:大雨のために、傾斜面の地表の土砂がゆるみ、崩れ落ちる災害。 土石流:泥や岩が地表水や地下水を多量に含み、泥水となって流動するもの。 地すべり:山腹や斜面を構成する土地の一部が下方に移動する現象。 ページのトップへ戻る
①地球の外観 大陸棚:海岸から水深130~140mまでの間に広がっている傾斜の緩い海底。 ②地球の内部構造 地殻:厚さ5~60km。固体。 大陸地殻:主に花こう岩質岩石や玄武岩質岩石でできている。 海洋地殻:主に玄武岩質からできている。 モホロビチッチ不連続面(モホ不連続面):これより上が地殻、下がマントル。地殻とマントルの境界は物質の違いによる。 マントル:深さ2900kmまで。マントルの上部は主にかんらん岩質岩石でできている。マントルは地殻より密度が大きく、下部に向かうほど密度が大きい。固体。 核:深さ約2900kmから中心(約6400km)までの部分。 外核:深さ約2900~5100kmまで。主に鉄でできている。液体。 内核:深さ約5100kmから中心まで。主に鉄でできている。固体。 ③プレートと地球の活動 プレート:地球の表層を覆っている、厚さ数十~200km程度の岩石の固い板状の部分。 プレートテクトニクス:地震や火山、大地形の分布など、様々な地球の活動をプレートの運動から説明する考え方。 海嶺(かいれい):新しくプレートが生産され、互いに離れていく、プレートの拡大する境界に見られる大地形。 海溝(かいこう):プレートが互いに近づき、一方のプレートが他方のプレートの下に斜めに沈み込んでいる、プレートの沈み込み境界に見られる大地形。 島弧(とうこ):海溝の陸側にできる、地震や火山の多い地形の1つ。日本列島など。 陸弧(りくこ):海溝の陸側にできる、大陸縁の山脈。アンデス山脈など。 島弧-海溝系:海溝と島弧を持つ地域。 造山帯:大山脈が形成される場所。プレートの沈み込み境界と衝突境界など、プレートの収束する境界にある。 トランスフォーム断層:2つのプレートがすれ違う境界。 ホットスポット:マグマの供給源が真下にあり、現在火山活動が起こっている場所。 アセノスフェア:1枚の固い板として水平に動くプレートの下にある、高温で軟らかく、流動性の高い部分。 リソスフェア:アセノスフェアより上の、地殻とマントル上部からなる、低温で固い層。プレート。リソスフェアとアセノスフェアの境界は岩石の種類は同じだが、その固さが異なる境界である。 マントル対流:マントル内にある、熱による大規模な対流運動。 ④地震 海溝型地震:沈み込む海のプレートに引きずり込まれてたわんだ陸のプレートが、急激に反発して元に戻ることにより発生する地震。プレートの沈み込みが続く限り、繰り返し同じように地震が起こるので、海溝沿いの地域で発生する大きな地震はある程度周期的に(数十~百数十年ごとに)起こる。関東大震災、東日本大震災の時の地震など。 プレート内地震:海のプレートの沈み込みに伴い、水平方向に押された陸のプレート内で岩盤の破壊が起こって発生した地震。 断層:岩盤が割れてずれた所。 活断層:最近数十万年間に繰り返し活動した証拠がある断層で、今後も活動する可能性が高いと考えられるもの。 震源断層:地震を発生させた断層。 地表地震断層:地震の時に地表に現れた断層。 余震:大きな地震(本震)の後に引き続き起こる多くの地震。 余震域:余震の起こった地域。 マグニチュード(M):地震の規模(エネルギー)の大小を表す尺度。 震度:ある地点での地震動の強さの程度。 異常震域:震源の深い地震の場合、震央から遠く離れた地域が震央に近い所よりも大きく揺れることがある。 PS時間(初期微動継続時間):P波到着からS波到着までの時間。 大森公式:震源の浅い地震における、PS時間Tと震源までの距離Dとの関係式。 D=kT(kは約6~8km) ⑤火山活動と火山岩の形成 マグマ:地下の岩石が溶けてできた、高温で液状の物質。 マグマだまり:発生したマグマは浮力によって上昇し、一時火山の下にマグマだまりを作る。 火山噴出物:火山の噴火によって地表に運び出された物質。溶岩・火山ガス・火山砕屑物(かざんさいせつぶつ)に大別される。 溶岩:マグマが地表に噴き出したものとそれが固結したもの。 火山ガス:主な成分は水蒸気だが、二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素なども含まれている。 火山砕屑物:主なものは火山灰・火山弾・火山岩塊・軽石などである。 溶岩流:粘性の小さいマグマの場合に発生する、溶岩が火口から流れ出る現象。 火砕流:粘性の大きいマグマの場合に発生する、高温の火山ガスと火山砕屑物が高速で山腹を流れ下る現象。 火山帯:火山は地球上に約1500あるが、その多くは特定の地域に集中し、帯状に連なった火山帯を形作っている。 環太平洋火山帯:太平洋を取り巻いて分布する火山帯。 火山前線(火山フロント):火山の分布の海溝側の限界線。 底盤(ていばん、バソリス):大規模な花こう岩の貫入岩体。 深成岩:マグマが地下深くでゆっくり冷えてできた火成岩。 等粒状組織:鉱物が十分に成長し、粗粒の鉱物からなる深成岩の組織。 火山岩:地表に噴出した溶岩や細い岩脈でマグマが急に冷やされてできた火成岩。 斑状組織:マグマが急に冷やされてできた細かい結晶やガラス質(非結晶質)の物質からなる石基が、マグマだまりなどの中で自由に成長していた粗粒の結晶(斑晶)を取り囲んでいるような、火山岩の組織。 自形:マグマの中で鉱物が結晶する(晶出する)時、各鉱物の外形は、結晶が十分に成長できれば結晶面で囲まれた自形になる。 他形:たくさんの鉱物が同時に結晶したり、他の鉱物のすき間を埋めて結晶したりするような場合には、結晶面で囲まれた形になることはできない。 火成岩の化学組成:火成岩は二酸化ケイ素の量の多い順に、酸性岩(ケイ長質岩)・中性岩・塩基性岩(苦鉄質岩)・超塩基性岩(超苦鉄質岩)に区分されている。 有色鉱物:火成岩を作る主な鉱物の中で、鉄やマグネシウムを含み、色がついているかんらん石・輝石・角閃石(かくせんせき)・黒雲母(くろうんも)など。 無色鉱物:火成岩を作る主な鉱物の中で、鉄やマグネシウムを含まず、無色または淡い色をしている石英や長石類など。 色指数:火成岩の中で有色鉱物が占める体積パーセント。
①堆積岩とその形成 機械的風化(物理的風化):地表に露出する岩石は、温度の変化に伴う膨張、収縮によって細かな割れ目が形成され、次第に細かく砕かれていく。 化学的風化:雨水や地下水が地表付近の岩石と反応して、鉱物の一部が溶け出したり、他の鉱物に変化したりすることで風化が進む。 続成作用(ぞくせいさよう):堆積物が長い年月の間に圧縮され、脱水して緻密になり、さらに粒子間に新しい鉱物ができることにより、固く固結した堆積岩になる作用。 ②地層と地質構造 層理面(地層面):地層の境界面。 地層累重の法則:古い地層が下位に、新しい地層が上位に重なること。 層序:複数の地層が堆積した順序。 斜交葉理(しゃこうようり、クロスラミナ):砕屑物を運搬し、堆積させた水流などの向き、強さが変化すると、層理面と斜交した細かな縞模様を示すクロスラミナが形成される。 級化構造(級化層理):1枚の地層の下部から上部に向かって、砕屑物の粒径が大きい物から小さい物へと変化している構造。 タービダイト:地震などをきっかけに発生する、水と砕屑物(さいせつぶつ)が混合した密度の高い流れ(乱泥流)が堆積した地層。級化構造がしばしば観察される。 漣痕(れんこん、リプルマーク):水底(堆積面上)の水流によって地層の上面に形成される構造。 底痕(ていこん、ソールマーク):水底を礫や貝殻などが転がったり、引きずられたりした跡を埋めるように次の地層が堆積したり、上位に重なる地層の重みで地層面がくぼんだりして、地層の下面に形成される構造。 整合:ある場所で、複数の地層があまり時間の間隔を開けずに連続的に堆積した場合の地層の接し方。 不整合:不連続な地層の接し方。 褶曲(しゅうきょく):岩石や地層が折り曲げられている地質構造。 背斜(はいしゃ):褶曲の中で山状に盛り上がった部分。 向斜(こうしゃ):褶曲の中で谷状にくぼんだ部分。 断層:力を受けた岩石や地層は連続的に変化するだけでなく、急に破壊され、切断されることがあり、その破断面に沿って両側の岩盤がずれた状態。 変成作用:火成岩や堆積岩が高い圧力や温度の下に長く置かれると、岩石中の鉱物が圧力や温度の影響を受けて、固体のまま化学組成の一部が変わったり、組織が変化したりして、他の種類の鉱物に変わったり(再結晶)、別の岩石になったりする作用。 変成岩:変成作用を受けた岩石。 ③地球の歴史の組み立て 示相化石(しそうかせき):化石として産出する過去の生物の中で、現在の生物との比較によって、生息当時の環境を推定するのに有効な物。 示準化石(しじゅんかせき、標準化石):ある特徴的な形を持つ生物の化石で、世界中の広い範囲の地層から、しかもある特定の時代の地層に限って産出する物。地層の詳しい年代を決めたり、遠く離れた地域に分布する地層の年代を比べたりする時に大変有効である。 鍵層(かぎそう):対比に役立つ地層。 顕生代(けんせいだい):5億4200万年前から現在まで。顕生代は化石の産出が豊富なので、主に化石から推定される生物の出現や絶滅の時期で地質時代の区分が決められている。 ④先カンブリア時代 原始大気:地球の材料となった微惑星に含まれていた水や二酸化炭素などは、微惑星同士の衝突によって気体として放出され、原始大気となった。 マグマオーシャン:原子地球では微惑星の衝突が続き、衝突によって発生した熱は大気や塵によって吸収され、温室効果によって原始地球の表面温度は1500℃以上に達し、地球表面の岩石が溶けてマグマになり、海のように地表を覆った。 原始海洋:微惑星の多くは地球や他の惑星に取り込まれて、地球への落下が減り、そのため地球表面や大気の温度は次第に下がって、マグマオーシャンの表面が冷えて原始地殻ができた。大気中の水蒸気も冷えて凝結し、雨となった地表に降り、原始海洋が形成された。 縞状鉄鉱層(しまじょうてっこうそう):大気中の酸素濃度は原生代前期の約24.5~20億年前に急激に増加し、この時期に海水に溶けていた鉄イオンは酸素と結合して大量に海底に堆積し、縞状鉄鉱層を形成した。今日、利用されている鉄はそのほとんどが原生代初期(約23~22億年前)に集中的に堆積した、縞状鉄鉱層の酸化鉄を多く含む部分から採掘されたものである。 ⑤顕生代 三葉虫(サンヨウチュウ):古生代の最初の時代であるカンブリア紀に出現した動物の代表例。節足動物。 筆石(フデイシ)・サンゴ:古生代オルドビス紀に出現した動物。 紡錘虫(フズリナ):古生代石炭紀からペルム紀の海で栄えた動物。 クックソニア:古生代シルル紀に現れた最初の陸上植物(コケなどを除く)。 イクチオステガ:古生代デボン紀になって魚類から分かれた両生類で、最初に上陸した脊椎動物(せきついどうぶつ)。 蘆木(ロボク)・鱗木(リンボク)・封印木(フウインボク):古生代石炭紀に繁栄し、森林が広がったシダ植物。これらの遺骸は南半球の高緯度地方を除く世界各地の沼地に大量に堆積し、石炭の元となった。 パンゲア:古生代末のペルム紀に、世界の主要な大陸が移動し、衝突して出現した超大陸。 アンモナイト:古生代中頃までには現われ、中生代の温暖な海で大繁栄した生物。 恐竜:中生代に陸上に出現した爬虫類(はちゅうるい)。 貨幣石(カヘイ石、ヌンムリテス):新生代古第三紀の暖かい海に生息していた大型有孔虫。 ビカリア:新生代古第三紀から新第三紀にかけての汽水域(河口などの海水と淡水が混合している所)に生息していた巻き貝。 大量絶滅:地球規模で短期間に多くの種類の生物が絶滅する出来事。顕生代の地層から見つかった化石の記録より、生物の種類が短期間に激減している時期が少なくとも5回あったことが分かっている。
①大気圏 気圧:その地点より上にある大気の単位面積当たりの重さ。 1気圧:水銀柱76cmの圧力。1気圧=約1013hPa(ヘクトパスカル)=760mmHg。 対流圏:地表から高度約11kmまでの大気圏。気温は平均して100mにつき、約0.65℃ずつ減少していく。 気温減率:気温の変化率。 圏界面(けんかいめん):対流圏と成層圏の境界。 成層圏:圏界面から高度約50kmまでの大気圏。高さと共に気温が少しずつ上昇する。 オゾン層:成層圏内の高度約15~30kmにかけて、オゾン(O3)を多く含む層。オゾン層は太陽からの紫外線の大部分を吸収しており、成層圏内で気温が高度と共に上昇するのは、オゾンが太陽からの紫外線のエネルギーを吸収しているためである。 中間圏:高度約50kmから約80~90kmまでの大気圏。気温は高さと共に低下し、中間圏上部で最も低くなる。 熱圏:中間圏を越えて、高度約500~700kmまでの大気圏。太陽からの紫外線やX線が吸収されて高温になっており、気温は高さと共に上昇する。 ②水と気象 潜熱:水が蒸発する時に周囲から熱を奪い、凝結する時に熱を放出するように、状態変化に伴って出入りする熱のこと。 飽和水蒸気量:ある温度での最大の水蒸気量。 飽和水蒸気圧:水蒸気が飽和している時の水蒸気の圧力。単位はhPa(ヘクトパスカル)。 相対湿度:ある温度の大気の飽和水蒸気圧(量)に対して、実際に大気中にある水蒸気の圧力(量)の割合(%)。 露点(ろてん):飽和水蒸気圧と大気中の水蒸気の圧力が等しくなり、水滴が出来始める温度。 過飽和:飽和水蒸気圧よりも大気中の圧力が高くても、水蒸気が凝結しない状態。 断熱変化:空気塊が上昇するにしたがって周囲の気圧が減少して、空気塊は膨張するが、この時、空気塊は周囲との熱のやり取りなしに(断熱的に)膨張し、温度が下がる。 ③地球のエネルギー収支 日射:地球が受ける太陽放射。 太陽定数:地球と太陽の距離がその平均距離にある時、単位時間に大気圏の最上部で太陽放射に垂直な面が受ける日射量約1.37kW/m2。 地球放射:地球から大気圏外に向かう放射。 温室効果:大気は可視光線を主とする波長の短い太陽放射はよく通すが、赤外線を主とする波長の長い地球放射はよく吸収するために、大気圏下層では熱が蓄積されて温度が高くなっている。 放射冷却:地表から放射される赤外放射が、地表の吸収する日射や大気の赤外放射を上回ると、地表の温度は下がる。 ④大気の大循環 大気の大循環:地球規模の空気の流れのこと。大気は地球全体を循環しながら、低緯度から高緯度へ熱を運んでいる。 ハドレー循環:低緯度地域の対流運動。赤道で上昇した大気は上空で高緯度に向かうが、地球の自転の効果によって西風となり、緯度20°~30°で下降して高圧帯(亜熱帯高圧帯)を形成する。下降した大気の一部は下層で亜熱帯高圧帯から赤道に向かうが、この流れは地球の自転の効果により、東よりの貿易風となる。 偏西風:南北両半球の中緯度地帯の対流圏上層を帯状に取り巻いて西から東へ吹く風。南北両半球共に中緯度帯ではハドレー循環のような大規模な鉛直面内での対流運動は存在せず、地表付近から上空まで西よりの風が吹いている。偏西風は蛇行しており、蛇行によって低緯度の熱を高緯度に運んでいる。 ジェット気流:偏西風の中で特に強い帯状の気流。 ⑤海水の循環 混合層:海洋の表層では、海水が太陽のエネルギーで暖められ、風や波によってよく混合されているため、水温が比較的高く、上下の温度差も小さい。 水温躍層:混合層の下では、水温が深さと共に急速に低下する。 深層:海洋の深部では水温は低く、その変化も小さい。 海流:ほぼ一定の方向に流れている水平方向の海水の流れ。 環流:広域にわたって海流が環のようにめぐり流れること。北太平洋では、低緯度を東から西に流れる北赤道海流の一部が西太平洋で黒潮として北上し、北太平洋海流となって東に流れ、北アメリカ大陸西岸を南下するカリフォルニア海流となる大規模な時計回りの流れがある。北大西洋にも同様の還流があり、南半球の還流は反時計回りになっている。 深層循環:海水の密度の変化によって生じる、地球規模の海水の循環。北極や南極の周辺では海水が凍ると、氷に取り込まれずに取り残された塩類によって海水の塩分が増加し、また低温であるため、海水の密度が大きくなる。密度の大きな海水は海洋の深部に沈み込み、赤道方向に向かう。すなわち、海水の深部を流れる海水の大部分は、北極や南極から沈み込んで流れてきたものである。 エルニーニョ現象:太平洋の赤道付近の気圧や海面水温の東西分布が通常より異なる状態になる現象。数年に1度に割合で起きている。 ⑥冬から春の気象 西高東低型:日本の冬型の気圧配置。冬は大陸の地表面が放射冷却で低温になるため、地表面に接する空気が冷やされてシベリア高気圧が発達する一方、日本の東の海上には低気圧が発達する。 温帯低気圧:亜熱帯高気圧帯よりも北方(南半球では南方)で見られる低気圧。春には偏西風が次第に北へ移動して、低気圧が日本海を通過するようになるが、南から暖かい空気が入ると、まだ冷たい大陸の空気とぶつかって温帯低気圧が急速に発達し、低気圧に向かって暖かく、強い南よりの風が吹き込むことがある。立春以後、最初に吹くこのような風を春一番と言う。 春のあらし:日本付近を通過する温帯低気圧が強く発達すると、全国的に荒れた天気になることがある。 移動性高気圧:温帯低気圧の後面を低気圧と共に移動していく高気圧。春には偏西風の影響により、温帯低気圧と移動性高気圧が交互に西から東に通過し、日本付近では3~5日程度で周期的に天気が変化するようになる。 ⑦夏から秋の気象 梅雨:6月から7月中旬にかけて、朝鮮半島南部・長江下流域から、北海道を除く日本列島に見られる雨期。五月雨(さみだれ)。 梅雨前線:オホーツク海上空にできるオホーツク海高気圧と、次第に北上してきた北太平洋高気圧との間に発生する停滞前線。高温で多湿の空気が梅雨前線に向かって南西側から流れ込み、降水の原因となる。 南高北低型:日本の夏型の気圧配置。偏西風が日本の北に移動して弱くなると、日本付近は北太平洋高気圧に覆われるようになり、南に高気圧、北に低気圧がある気圧配置になる。 台風:北太平洋西部の海上で発生する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/sを超えたもの。 秋雨前線:9月中旬から10月中旬にかけて日本の南岸沿いに現れる停滞前線。 秋雨:秋雨前線がもたらす秋の長雨。
①太陽系の天体 1天文単位:太陽と地球の平均距離。1天文単位=約1.5億km。 小惑星:主に火星の軌道と木星の軌道の間を公転している小天体。 太陽系外縁天体:主に海王星の軌道の外側を公転している小天体。 地球型惑星:岩石を主体とする固体の表面を持ち、半径は比較的小さいが、密度の大きな惑星。太陽系の8個の惑星のうち、太陽に近い水星・金星・地球・火星。 木星型惑星:固体の表面を持たず、半帰依は大きいが、密度の小さな惑星。太陽系の8個の惑星のうち、太陽から遠い木星・土星・天王星・海王星。 大赤斑(だいせきはん):木星の表面に見られる大気の渦。 ②太陽系の誕生 原始太陽系星雲:今から約46億年前、星間物質(主成分は水素92%、ヘリウム8%)が回転しながら、そのほとんど中心部に集まって原始太陽になり、残りの星間物質が原始太陽の周りを回る円盤を形成した。 微惑星:太陽系のような惑星系形成の初期段階にある原始惑星系円盤の中で作られる小天体。直径1~10km程度。微惑星は衝突・合体を繰り返し、次第に成長して、原始地球や他の原始惑星となった。 ③太陽 周辺減光:望遠鏡で太陽像を白紙に投影すると、周辺部に行くほど次第に暗くなっている現象。 光球:太陽の観測される光を出している厚さ約500kmの層。 粒状班:光球に見られる、細かいつぶつぶの模様。粒状班は1つ1つが対流の渦で、太陽の内部から対流によってエネルギーが運ばれていることを示している。 彩層:皆既日食の時に月に隠された光球の外側に見られる、ピンク色の薄い層。 コロナ:皆既日食の時に彩層の外側に見られる、広く広がる真珠色の部分。 プロミネンス(紅炎):太陽の彩層からコロナの中に立ち上がる炎状のガス。 太陽風:太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子の流れ。 黒点:周りの光球に比べて約1500~2000Kほど温度が低いため、黒く見える点。 フレア:黒点に近い、ある限られた領域の彩層が明るく輝く現象。フレアが発生すると、高速の荷電粒子の流れである太陽風の粒子の数や速度が増加する。 フラウンホーファー線:太陽のスペクトルの中に見られる多くの暗線(吸収線)。これらの暗線は太陽大気を通過する光から、太陽大気中の原子によって特定の波長の光が吸収されてできるため、暗線の波長や強度を調べると、太陽大気の元素組成が分かる。 宇宙元素組成:太陽全体の元素組成は太陽大気の元素組成にほぼ等しいと考えられており、これらの数値は一般の恒星や星間ガスについてもほとんど変わりはない。 核融合:高温高圧の下で水素の原子核同士が激しく衝突し、4個の水素原子核が1個のヘリウム原子核に変わり、この時に失われた質量がエネルギーとなって放射される現象。 ④太陽の誕生と進化 星間物質:恒星と恒星の間の空間に存在する物質。主に水素からなる星間ガス、ケイ酸塩・石墨(せきぼく)・水(氷)などの固体微粒子(宇宙塵〔じん〕、星間塵)である。 星間雲:星間物質が周囲より密に分布する部分。 散光星雲:特に密度の高い星間雲が近くの明るい恒星の放射を受けて輝くもの。オリオン大星雲など。 暗黒星雲:星間物質によって背後の恒星の光が散乱・吸収されるもの。 原始星:星間雲の中の密度の高い部分で、重力によってガスが収縮し、内部の温度が高くなって輝き始める段階の恒星。 原始太陽:原始星となった太陽。 Tタウリ型星:水素の核融合が始める直前の段階になる恒星。原始太陽を取り巻くガスが失われるようになると、太陽の光が宇宙空間に放たれるようになる。 主系列星:Tタウリ型星が次第に収縮し、中心部の温度が1000 K以上になり、中心部で水素の核融合が始まる段階に到達した恒星。太陽が主系列星の段階にある期間は約100億年と推定されている。 巨星(赤色巨星):恒星が主系列星を終えた後の進化段階。太陽の中心部ではヘリウムが増加し、やがてヘリウムだけの核ができると、水素の核融合はヘリウムの核の外側の球殻状の領域に移っていく(水素殻燃焼)。水素殻燃焼が起こると、太陽の外側が膨張し始め、表面温度が低下して、巨星(赤色巨星)になる。 白色矮星(はくしょくわいせい):核融合反応を終えた段階の恒星。巨星となった太陽は外層のガスを放出し、放出されたガスは広がって惑星状星雲となるが、その中心には高温の小さな天体が残される。この天体が白色矮星である。 ⑤銀河系と周りの銀河 銀河系:太陽を含む恒星とガスの大集団。我々の銀河。約2000個の恒星が含まれ、その他に主として水素からなる星間ガスや固体微粒子(宇宙塵)などの星間物質が存在する。 バルジ:銀河系中央部の膨らみの部分。半径約1万光年の球状。 円盤部(ディスク):バルジに続く、薄い円盤部分。バルジと円盤部は半径約5万光年で、太陽は円盤部にある。 ハロー:銀河系全体を取り巻く、半径約75000光年の球形の領域。100万個程度の恒星が球状に集まっている球状星雲が分布。 銀河:銀河系と同じように、恒星が数百億~1兆個くらい集まった天体。銀河には、渦巻き銀河・棒渦巻き銀河・楕円銀河・不規則銀河など、様々な形のものがある。 局部銀河群:地球の所属する天の川銀河(銀河系)が所属する銀河群のこと。銀河系は、近くにある小型の銀河である大マゼラン雲・小マゼラン雲と共に三連銀河になっており、さらに大きなスケールでは、銀河系やアンドロメダ銀河(M31)は他の銀河と共に総勢30個ほどのグループを作っている。これを局部銀河群と言う。 ⑥宇宙の姿 銀河群:数個から数十個の銀河が作る小規模な銀河集団。 銀河団:数百~数千個の銀河の集まり。 宇宙の大規模構造:宇宙の中で銀河の分布が示す巨大な泡のような構造(泡構造)。銀河は一様に分布しているのではなく、銀河が集まっている所(超銀河団)や銀河が非常に少ない空洞の部分(ボイド)があり、約3億光年の距離の所には数千個の銀河が壁のように連なるグレートウォールがある。大規模構造は80億光年程度の所まで続いていることが分かっている。 宇宙の地平線:ほぼ光速度と宇宙の年齢(約137億年)の積を半径とする領域の境界。 火の玉宇宙:約137億年前に誕生した直後の高密度で高温の宇宙。 ビッグバンモデル:火の玉宇宙が膨張・冷却して現在の宇宙になったというモデル。
①多様な生物 系統樹:多様な生物が共通の祖先から分かれて生じてきたことを、枝分かれした樹木のように描いて表したもの。 系統:生物が進化してきた経路。 ②生物共通の単位-細胞 フック:1665年にコルクの薄片を顕微鏡で観察して、細胞(cell)を発見した。 シュライデン、シュワン:1839年に「細胞が生物体を作る基本単位である」という細胞説を提唱した。 細胞膜:細胞を包んで、周囲から独立したまとまりを作っている部分。 原形質:細胞膜とそれに包まれた内部。 原形質流動:細胞の内部が動くこと。 細胞質:原形質のうち、核以外の部分。 細胞壁:植物や細菌の細胞で、細胞膜の外側にある固い層。 原核細胞:細胞内に核がなく、遺伝物質を含んだ染色体が細胞質中にあるような細胞。 原核生物:原核細胞でできている生物。大腸菌やシアノバクテリア(ラン藻)などの細菌類。 真核細胞:細胞内に核を持つ細胞。 真核生物:真核細胞で体ができている生物。動物や植物は全て真核生物である。 ③細胞の構造の共通性と多様性 細胞小器官:真核細胞の細胞内にあり、それぞれ独自の働きを持っている様々な構造体。 細胞質基質:細胞小器官の間にあって、構造の見られない液状の部分。 核膜:核を包んでいる膜。 クロロフィル:光合成を行う細胞小器官である葉緑体に含まれる緑色の色素。 液胞膜:成熟した植物細胞で大きく発達することが多い液胞を包む膜。 細胞液:液胞の中を満たしている液。 分解能:顕微鏡で識別できる2点間の距離。 ④生物の構造の共通性と多様性 単細胞生物:細胞1個で生活している生物。ゾウリムシ、クラミドモナス、細菌など。 細胞群体:単細胞生物の中で、集団を形成し、1つの個体のように生活するもの。オオヒゲマワリ(ボルボックスなど)。 多細胞生物:多数の細胞が集合した生物。 組織:細胞が集まってできた生物体の構造。上皮・筋肉・神経など。 器官:いくつかの組織からできている生物体の構造。眼・肝臓など。 ⑤生命活動とエネルギー 代謝:細胞が取り入れた物質を材料として新たな物質を合成したり、取り入れた物質や合成した物質を分解すること。 同化:簡単な物質から、体を構成する化学的に複雑な物質を合成すること。 異化:複雑な物質を単純な物質に分解すること。 独立栄養生物:植物のように、外界から取り入れた無機物だけを利用して、生活し、増殖することができる生物。 従属栄養生物:動物のように、他の生物の作った有機物を利用する生物。 ATP(アデノシン三リン酸):生物体内でエネルギーの移動の仲立ちをしている化学物質。エネルギーの通貨にたとえられる。 高エネルギーリン酸結合:ATP分子内のリン酸同士の結合。ATPが分解され、ADP(アデノシン二リン酸)とリン酸になる時、大きなエネルギーが放出される。 酵素:化学反応の速度を促進する働きを持つタンパク質。生体触媒。 触媒:化学反応を促進する物質。 ⑥光合成と呼吸 光合成:植物や藻類などが行っている、太陽の光エネルギーを利用して、二酸化炭素と水から有機物を合成する働き。 CO2+H2O+光エネルギー→有機物+O2 同化デンプン:光合成によって葉緑体中に形成されるデンプン。やがてスクロースとなって、植物の各部に運ばれる。 転流:物質が植物体内のある組織から別の組織に運搬されること。 貯蔵デンプン:植物の貯蔵器官に蓄えられるデンプン。 呼吸:酸素を用いて、炭水化物・脂肪・タンパク質などの呼吸基質からエネルギーを取り出し、生命活動に利用できるATPを生成すること。 有機物+O2→CO2+H2O+エネルギー 細胞内共生説:マーグリス。原核生物が他の細胞の内部に入り込んで共生することにより、ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官が生じたとする説。
①遺伝子とは 形質:生物の種類によって特有な形や性質などの特徴。 遺伝:親の形質が子やそれ以後の世代に現れる現象。 メンデル:遺伝の法則を発見。形質は1対の要素によって規定されており、子は両親から1個ずつ要素を受け取ると考えた。 遺伝子:形質を決定する要素。遺伝子は染色体に含まれる。 DNA(デオキシリボ核酸):遺伝子の本体。 形質転換:遺伝形質の変化。 ②DNAの構造 ヌクレオチド:リン酸・糖・塩基からできている物質。ATPもヌクレオチドの一種であり、 核酸であるDNA、RNAもヌクレオチドが多数連結した鎖状の分子である。 デオキシリボース:DNAのヌクレオチドの糖。 アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C):DNAのヌクレオチドの塩基。 ワトソン、クリック:DNAの二重らせん構造模型を提案した。 相補性:AとT、GとCがかぎとかぎ穴のように結合する性質。 ③遺伝子とゲノム ゲノム:ある生物の生殖細胞が持つ全ての遺伝情報。 ゲノムプロジェクト:ある生物が持つゲノムの全塩基配列を解読して全遺伝情報を解読しようとする計画。 ④遺伝情報の複製 体細胞分裂:体を作る細胞が増える時の細胞分裂。 減数分裂:生殖細胞が生じる時の細胞分裂。 DNAの複製:母細胞のDNAの塩基配列と同じ塩基配列を持つDNAを作ること。 ⑤遺伝情報の分配 細胞周期:細胞が分裂する前にDNAは複製され、分裂の結果、DNAは娘細胞に均等に分配される。その結果、どの細胞も同じ遺伝情報を持つDNAを同じ量ずつ持つことになる。この一連の周期的過程を細胞周期と言い、大きく分裂期と間期に分けられる。 核分裂:細胞分裂において、核内の染色体が均等に分裂される分裂。 細胞質分裂:細胞分裂において、細胞質が二分される分裂。 M期(分裂期):分裂が行われている時期。前期・中期・後期・終期に分けられ、細胞質分裂は終期に起こる。 間期:分裂が終わってから次の分裂が始まるまでの時期。 S期(DNA合成期):間期のうち、DNAを合成する時期。 G1期(DNA合成準備期):M期が終わってからS期が始まるまでの時期。 G2期(分裂準備期):S期が終わってからM期が始まるまでの時期。 G0期:増殖能力を持ちながら増殖を止めている時期。ヒトを含めた多細胞生物では数多く見られる。 ⑥遺伝情報とRNA 遺伝子の発現:遺伝子のDNAの情報を元にしてタンパク質が合成されること。 RNA(リボ核酸):DNAと同様にヌクレオチドが連結した鎖状の分子であり、通常は1本鎖として存在する。 リボース:RNAのヌクレオチドの糖。 アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C):RNAのヌクレオチドの塩基。DNAのチミン(T)の代わりにRNAではウラシル(U)が含まれる。 伝令RNA(mRNA):DNAの塩基配列の情報を写し取ったRNA。 ⑦遺伝情報の発現とタンパク質の合成 セントラルドグマ:遺伝情報の発現の流れには、DNAの塩基配列を写し取ったmRNAが作られ、mRNAの塩基配列を元にアミノ酸の配列が指定されてタンパク質が合成されるという方向性があるとする考え方。遺伝情報の発現の大原則とされる。 転写:mRNAが遺伝情報としてのDNAの塩基配列を写し取りながら作られること。 翻訳:mRNAの塩基配列がアミノ酸配列に読み換えられ、タンパク質が合成される過程。翻訳が行われる際、3つの塩基が一組になって1つのアミノ酸が指定される。
①恒常性とは 恒常性(ホメオスタシス):外部の環境が変化しても、動物が体の状態を一定に保とうとする性質。 内部環境:動物細胞は体液に浸されており、これが直接の環境となる。体液の塩類・酸素・血糖の濃度やpH、温度などは外部環境が変化してもほぼ一定に保たれている。 ②体液とその成分 血しょう:血液の液体成分。主成分は水であり、それにタンパク質や無機塩類などが溶けている。 赤血球:血液の有形成分の1つ。ヘモグロビンというタンパク質を含んでおり、これが肺で酸素と結合して体中の組織へ酸素を運搬する。骨髄で作られ、約120日後に主に脾臓で破壊される。 白血球:血液の有形成分の1つ。体を守る働きをしており、最も数が多い好中球は細菌を食べ、好酸球は寄生虫を攻撃し、リンパ球は抗体産生などに関わり、単球はマクロファージへと変化して細菌をはじめとする異物を食べる。 血小板:血液の有形成分の1つ。血液凝固因子を放出し、血液凝固によって傷口をふさぎ、止血する。 緩衝作用:少量の酸やアルカリを加えてもpHがほぼ一定に保たれる働き。血液にも緩衝作用が認められる。 静脈血:ヘモグロビンを多く含む血液。暗赤色。 動脈血:酸素ヘモグロビンを多く含む血液。鮮紅色。 閉鎖血管系:閉じた回路を作り、赤血球をはじめ、血液の主な部分がいつも血管内を循環しているような血管系。脊椎動物の場合、心臓から送り出された血液は動脈を通って毛細血管に至り、静脈を経て心臓に戻ってくる。無脊椎動物でもミミズなどの環形動物は閉鎖血管系である。 開放血管系:毛細血管が無く、動脈の末端が開いている血管系。血液は動脈から組織のすきまに流れ出し、それが静脈を経て心臓に戻ってくる。昆虫やエビの仲間(節足動物)、貝の仲間(軟体動物)など。 陶房結節(とうぼうけっせつ):ヒトの心臓の右心房にあり、心臓のリズムを作り出している。 組織液:血しょうの一部が毛細血管から漏れ出たもの。細胞を浸しており、栄養素や酸素を細胞に供給し、老廃物を受け取ったりする。 リンパ液:組織液の一部が毛細リンパ管に入ったもの。 血液凝固:新鮮な血液をしばらく放置すると、血しょう中のタンパク質が赤血球や白血球などの有形成分をからめて固まった沈殿物が生じる現象。 血ぺい:血液凝固において生じる血液の塊。 血清:新鮮な血液をしばらく放置すると生じる、やや黄色い上澄み。 フィブリン:血小板から血液凝固を開始させる因子が放出され、その血液凝固因子が血液中のプロトロンビンに作用してトロンビンが作られる。トロンビンはフィブリノーゲンという血液中の物質に作用してフィブリンというタンパク質を作り、フィブリンでできた繊維が血小板や赤血球をからめて血ぺいを作り、血液凝固が起こって傷口をふさぎ、止血する。 ③体液の恒常性 肝門脈(かんもんみゃく):消化管から吸収した栄養成分や代謝産物などを肝臓で処理するために肝臓に運ぶ特別の輸送路。小腸で吸収されたグルコースは肝門脈を経て肝臓に入り、その一部はグリコーゲンに合成されて肝臓に貯蔵される。 解毒作用:あるコースなどの有害物質は肝臓で分解されたり、無害な物質に変えられたりする。 胆汁(たんじゅう):肝細胞で作られ、肝臓の解毒作用によって生じた不要な物質や、脂肪を消化しやすくする物質を含んでいる。 ネフロン(腎単位): 1個の腎臓中に約100万個含まれる尿を生成する単位構造。腎小体とこれに続く細尿管(腎細管)からできている。 腎小体:糸球体とそれを包み込んでいるボーマン嚢(のう)からなる。 原尿:細い血管が集まった糸球体から、血液中の血球やタンパク質以外の大部分がボーマン嚢へこし出された液。原尿の成分は血しょうと似ており、尿の成分とは違う。 再吸収:原尿は細尿管に送られ、そこでグルコースの全てや塩類の大部分が毛細血管内に再吸収される。水分は細尿管とそれに続く集合管とで毛細血管内に再吸収される。 腎う:再吸収された残りが尿となり、腎うを経てぼうこうに送られ、排出される。老廃物の尿素などは再吸収されにくいため、濃縮されて排出されることになる。 ④自律神経系と内分泌系 自律神経系:感覚神経系、運動神経系と共に末梢神経系に属し、交感神経系と副交感神経系からなる。恒常性に関わる。 内分泌系:ホルモンという化学物質が血液中に分泌され、血流によって運ばれることで情報が伝えられる。 外分泌腺:化学物質を分泌する細胞が集まった分泌腺のうち、分泌物を体外に導く管を持つもの。 内分泌腺:化学物質を分泌する細胞が集まった分泌腺のうち、管を持たず、分泌物を血管中に放出するもの。 ⑤ホルモンによる調節 ホルモン:体内の特定の部分で作られ、それが血液やその他の体液中に分泌されて体内の他の場所に運ばれ、そこに存在する特定の組織の活動に一定の変化を与える化学物質。 標的器官:ホルモンが作用する特定の器官。 間脳:視床下部とそれにつながっている脳下垂体がホルモン分泌中枢として働く。 神経分泌細胞:ホルモンを分泌する神経細胞。 チロキシン:脳下垂体前葉から甲状腺刺激ホルモンが血液中に分泌され、その刺激で甲状腺から分泌されるホルモン。体液を経由してチロキシンを受け取った各細胞では呼吸量が増えて酸素やグルコースの消費量が増え、体温が上がる。視床下部や脳下垂体前葉はそれに反応して、甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制するように働く。逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体前葉は甲状腺刺激ホルモンを増やすように働く。 フィードバック:最終的に得られた結果(最終生産物など)が始めの段階に戻って影響を及ぼすこと。 ⑥自律神経による調節 自律神経:交感神経と副交感神経からなり、多くの場合、両者が同一の器官に分布し、一方がその器官の働きを促進すると他方が抑制し、相互に拮抗的に作用して器官の働きを調節している。通常、自律神経は大脳の支配から独立しており、意志とは無関係に自律的に働き、その起点は中脳・延髄・脊髄にある。 交感神経:心臓の拍動を速めたり、消化器の運動を抑制したりする。 副交感神経:心臓の拍動を遅めたり、消化器の運動を促進したりする。 ⑦自律神経とホルモンの共同作用 低血糖濃度の調節:低い血糖濃度の血液が視床下部の血糖調節中枢に入ると、この中枢から交感神経や脳下垂体へと指令が出て、①副腎髄質からはアドレナリンが、②副腎皮質からは副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドが、③脳下垂体前葉からは成長ホルモンが、甲状腺からはチロキシンが分泌される。また、低い血糖濃度の血液の直接の刺激や交感神経の刺激により、⑤すい臓のランゲルハウス島のA細胞からグルカゴンが分泌される。アドレナリンやグルカゴン、糖質コルチコイドが主たるもので、成長ホルモンやチロキシンは補助的であるが、低い血糖濃度は生命の危険に直接関わるため、二重三重に安全を保障している。 高血糖濃度の調節:高い血糖濃度の血液が視床下部を刺激すると、その刺激は副交感神経を経て、すい臓のランゲルハウス島のB細胞に伝えられ、そこからインスリンが分泌される。また、高い血糖濃度の血液はランゲルハウス島のB細胞を直接刺激して、やはりインスリンの分泌を促す。 ⑧免疫とは 生体防御:異物の侵入を防いだり、侵入した異物を除去したりする、生体の仕組み。 免疫:生体には病原体などの異物が体外から侵入したり、がん細胞が発生したりしているが、これらを非自己として認識して除去する仕組み。 食作用:好中球やマクロファージ、樹状細胞などの白血球が、異物が侵入した部位に集まり、直接異物を取り込んで処理すること。 リンパ球:白血球の1つで体液中に抗体を分泌して異物を排除したり、異物を直接攻撃したりする。リンパ球にはいくつか種類があり、T細胞は異物を認識し、B細胞と呼ばれる別のリンパ球を刺激する。 ⑨体液性免疫 抗原:リンパ球に抗体を作らせる原因となる物質。 抗体:抗原に対して特異的に反応するタンパク質。B細胞によって作られる。 抗原抗体反応:抗体は抗原に特異的に結合すること。抗原と交代が結合した複合体は、白血球によって食作用を受けて排除される。 ヘルパーT細胞:体内に異物が侵入すると、樹状細胞などが異物を取り込んで分解し、分解された小さい異物がこれらの細胞上に抗原として提示されると、ヘルパーT細胞と呼ばれるT細胞の一種が認識する。抗原を認識したヘルパーT細胞は増殖し、同じ抗原を認識したB細胞を活性化する。 抗体産生細胞:増殖したB細胞は抗体産生細胞となり、大量の後退を産生し、体液中に分泌するようになる。抗原は分泌された抗体と特異的に結合した後に、マクロファージによって処理される。 体液性免疫:体液中に分泌された抗体による免疫。 一次応答:異物が体内に侵入すると、免疫系はゆっくりと反応し、1~2週間かけて抗体を作り始めるが、抗体産生量は多くなく、1か月を過ぎるとほぼゼロになる。 記憶細胞:刺激を受けたB細胞の一部は記憶細胞として体内に残り、記憶細胞は同じ抗原に出会うと直ちに増殖し、抗体を大量に産生する。 二次応答:一度感染した病原体に感染しにくくなるのは、記憶細胞が感染したことのある抗体を大量に産生するためで、しかも大量生産は1か月以上持続する。この反応を二次応答と言う。はしかに1度かかると、以降はかかりにくくなるのは、この二次応答が働くからである。 血清治療:あらかじめ動物に作らせた抗体を含む血清を注射することで、症状を軽減させる治療。今でも緊急の場合に用いられており、ハブにかまれた場合、ウマなどの動物にハブ毒のワクチンを注射して抗体を作らせ、その動物から採った血清をハブにかまれた人に注射して、症状を軽減する。 アレルギー:抗原抗体反応が過敏に起こって、生体に不都合な影響を与えること。花粉症やじんましんなど。 アレルゲン:アレルギーの原因となる抗原。 ワクチン:特定の病原体による病気を予防するために、抗原として接種する物質。弱毒化したウイルスや細菌の表面にあるタンパク質などが用いられる。 予防接種:病原体への抵抗力を作らせるためにワクチンを接種すること。 ⑩細胞性免疫 キラーT細胞:抗原を認識したヘルパーT細胞の刺激で増殖し、ウイルスや細菌などに感染した細胞を直接攻撃したり、感染細胞表面に現れた抗原を直接認識して、感染細胞を攻撃したりする。刺激を受けたキラーT細胞の一部は記憶細胞になり、体内に残る。 細胞性免疫:細胞が直接抗原を排除する免疫。がん細胞を排除したり、異物と認識された移植組織の拒絶反応にも働いたりする。ちなみに体液性免疫は細胞外に存在するウイルスに対しては働くが、細胞内のウイルスに対しては働かない。それは細胞内のウイルスには抗体が直接働かないからである。ウイルスが細胞に感染している場合、細胞性免疫によって、ウイルス感染細胞を直接攻撃することで、ウイルスを排除する。 ツベルクリン反応:ヒトや動物が結核菌に対する免疫ができているかどうかを調べるもので、結核菌のタンパク質を皮下に注射し、赤く腫れるかどうかで免疫の有無を判断する。 BCG:ツベルクリン反応で陰性と判断された人は今後、結核菌に感染する恐れがあるので、人工的に免疫を持たせるため、弱毒化した結核菌を注射することが行われている。この時に用いられる弱毒結核菌をBCGと言う。 拒絶反応:他人の皮膚や臓器を移植した場合、移植された組織が非自己と認識され、キラーT細胞が移植された組織を攻撃し、攻撃された組織は定着できなくなること。 エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群):ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が原因で免疫力が低下する疾患。 日和見感染(ひよりみかんせん):HIVは性的接触や輸血などによってヘルパーT細胞に感染し、体液性免疫と細胞性免疫を損なわせる。これによって健康な状態だと感染しない病原体に感染するようになる。
①様々な植生 植生:ある場所に生息している植物の集まり。 環境:生物の生活に影響を及ぼしている外界。環境には非生物的環境(温度、光、大気、水、土など)と生物的環境がある。 適応:生物の持つ形態や生理的機能などの性質が、その環境の下で生活していくのに都合よくできており、生物の生存や繁殖に役立っていること。 生活形:環境への適応を反映した形態。植物の生活形は、葉、それを支える茎、土壌中から水や養分を吸収する器官である根の形態などによって特徴づけられている。 同化器官:葉のように光合成を行う器官。 非同化器官:茎や根のように光合成を行わない器官。 一年生植物:種子が発芽してから1年以内に結実して枯死する植物。 多年生植物:地下部などに養分を貯蔵しながら、1年を超えて生育する植物。 優占種:植生の中で、個体数が多く、背丈が高くて葉や枝の広がりが大きい種類。 相観:優占種の生活形によって特徴づけられる植生の概観的様相。 森林の階層構造:照葉樹林では、スダジイやアカガシなどによる高木層が林冠と呼ばれる森林の最上層にある葉や枝の集まりを形成し、その下にスダジイの幼木やヤブツバキなどによる亜高木層、さらに低木層としてイヌビワなどが存在する。林床と呼ばれる森林の最下層には太陽光が届きにくく、背丈の低い草などからなる草木層やコケ層が見られる。 落葉層:地表面にある落ち葉などでできた層。 腐食:落葉や落枝が微生物や動物などによって分解され、黒褐色の有機物ができること。 腐植層:腐食に富む層。この下に母材と呼ばれる岩石が水、温度、空気による風化を受けてできた層がある。 団粒構造:風化した細かい岩石と腐食がまとまって粒状の構造になったもの。団粒構造は保水力が高く、空隙に富み、植物の根は団粒構造の発達した、有機物に富む層に主に形成される。 ②遷移 環境形成作用:生物が環境に働きかけ、植生内の光や土壌の環境を変えていくこと。 遷移:環境形成作用の変化に伴い、長い年月の間に植生を構成する植物の種類や、植生の相観が移り変わっていくこと。 一次遷移:火山の噴火によって溶岩や火山灰などで覆われた地表や海洋の新島、新しくできた湖沼のように、土壌や種子などが無い場所で始まる遷移。 二次遷移:森林の伐採や山火事などによって植生が破壊され、土中に有機物・種子・地下茎などが残っている場所で始まる遷移。 荒原:非生物的環境要因が極端に厳しく、植物が地表全体を覆っていない場所。 極相(クライマックス):陰樹を中心とした林がいったん成立すると、長年にわたり、植生を構成する植物の種類の組成が安定した状態を維持するようになる。このような状態を極相と言う。 乾性遷移:陸上が出発点となる遷移。 湿性遷移:湖沼から始まる遷移。 陽樹:日当たりの悪い所では成長できない樹木。 陰樹:幼木の時は日当たりの悪い所で成長し、ある程度成長すると明るいほどよく成長する樹木。 光補償点:光合成と呼吸の量が等しくなり、見かけ上、二酸化炭素の出入りが無くなる時の光の強さ。 見かけの光合成速度:光が光補償点より強くなると二酸化炭素の吸収が見られるが、この時測定された二酸化炭素の吸収速度のこと。 光合成速度:見かけの光合成速度に呼吸速度を加えて得られる速度。 光飽和点:光合成速度は最大値となり、それ以上光が強くなっても光合成速度が増加しなくなる時の光の強さ。 ギャップ:極相林の数%を占める、陰樹の枯死などによってできる明るい空き地。 ギャップ更新:ギャップを中心とした極相の更新。ギャップができると、陽樹がまず林冠まで成長し、その後、陰樹に置き換わるという小規模な二次遷移が進行する。このため、極相林の林冠には部分的に陽樹が見られ、陰樹と陽樹のモザイク状の林冠となる。 ③気候とバイオーム バイオーム(生物群系):ある地域に生息している全ての生物の集まり。 熱帯多雨林:熱帯で降水量の多い地域で発達するバイオーム。様々な種類の常緑広葉樹からなり、樹高は70mに達することもある。土壌の腐植層は薄く、土壌動物が少ないことが特徴である。 亜熱帯多雨林:熱帯に比べ、気温が下がる時期がある亜熱帯で降水量の多い地域に分布するバイオーム。主に常緑広葉樹からなるが、熱帯多雨林よりも林冠が低いことが多い。熱帯と共に亜熱帯の河口付近でも、根系を地上部に出したヒルギ類が優占し、マングローブを形成して、様々な生物の生息場所となっている。 雨緑樹林:熱帯や亜熱帯域で雨季と乾季が明瞭な場所に分布し、雨季に葉をつけ、乾季に落葉するチークなどが優占するバイオーム。 硬葉樹林:冬に雨が多く、夏に少ない地中海性気候の地域に分布するバイオーム。夏に日差しが強く、著しく乾燥するため、葉が硬くて小さいオリーブやコルクガシなどの耐乾性の高い植物が優占している。 照葉樹林:温帯のうち、比較的暖かな暖温帯に分布するバイオーム。葉が厚くて光沢のあるスダジイやタブノキなどの照葉樹(常緑広葉樹)が優占している。 夏緑樹林:温帯のうち、比較的寒冷な冷温帯に分布するバイオーム。冬に落葉するブナやミズナラなどの落葉広葉樹が優占する。 針葉樹林:冬が長くて、寒さが厳しい亜寒帯地方に分布するバイオーム。スカンジナビア半島・シベリア・アラスカなどにはトウヒ類・モミ類などが優占する常緑針葉樹林が分布し、東シベリアには落葉性の針葉樹であるカラマツ類も見られる。 ツンドラ:年平均気温が-5℃以下になる寒帯で分布するバイオーム。夏が短く、樹木は生育できず、永久凍土という土壌に適応した地衣類やコケ植物などが優占する。 サバンナ:熱帯地方で乾季の長い地域で発達するバイオーム。イネの仲間の草本を主とする。森林が成立する年降水量よりも年降水量が少ない地域では草原となる。 ステップ:温帯地方で雨が少ない地域で発達するバイオーム。地中に細かく絡み合った根を張る、イネの仲間の草本を主とする。樹木はほとんどない。 砂漠:年降水量が200mmにも達しない地域でのバイオーム。わずかにサボテンのような多肉植物や一年生植物がまばらに生えているだけである。 生物多様性の緯度勾配(いどこうばい):一般に生物の種類数は熱帯地域で多く、高緯度地方に行くほど少なくなること。 水平分布:緯度の違いによって生じる水平方向のバイオームの分布。 垂直分布:標高の違いによって生じる垂直方向のバイオームの分布。 丘陵帯:垂直分布において、照葉樹林が帯状に分布している所。 山地帯:垂直分布において、夏緑樹林が帯状に分布している所。 亜高山帯:垂直分布において、針葉樹林が帯状に分布している所。 森林限界:亜高山帯の上限。樹木が点在する。 高山帯:森林限界を超えた所。風が強いことが多く、ハイマツ・シャクナゲ類の矮小林(わいしょうりん)とお花畑と呼ばれる高山草原が広がっている。 ④生態系とは 生態系:生物の集団とそれを取り巻く環境を1つのまとまりとしてとらえたもの。 生産者:無機物から有機物を合成する生物。植物や藻類など。 消費者:他の生物を食べて、自己のエネルギー源として利用する生物。動物など。 分解者:動植物の遺体や排出物を分解することによって養分を得ている生物。菌類や細菌類など。 食物連鎖:食う-食われるの関係が一連に続くこと。 食物網:1つの生物は2種類以上の生物を食べたり、2種類以上の生物に食べられたりするなど、自然界における食物連鎖の関係は複雑な網目状となっていること。 生物量:ある地域の生物体の乾燥重量。 生態ピラミッド:生態系における個数や生物量を、生産者から一次消費者、二次消費者…と積み重ねると、ピラミッド型になること。 ⑤物質循環とエネルギーの流れ 化石燃料:石炭、石油など、化石になった有機物のうち燃料として用いられるもの。化石燃料の利用によって大気中に放出される二酸化炭素やメタンガスの量が増え、これが地球温暖化の原因になっている可能性が指摘されている。 窒素同化:植物が土壌中に存在する硝酸イオンやアンモニウムイオンなどの窒素を含む無機物を吸収し、体内でタンパク質などの窒素を含む有機物を作ること。 窒素固定:大気中の窒素分子を窒素化合物に変える働き。ネンジュモなどのシアノバクテリア、マメ科植物に共生する根粒菌などの生物の他に空中放電でも起こり、また工業的にも行われる。 脱窒(だっちつ):土壌中の窒素化合物は細菌類の働きによって窒素分子になり、大気中に出る。 ⑥生態系のバランスと保全 キーストーン種:生態系のバランスそのものに大きな影響を及ぼす生物のこと。たった1種類のキーストーン種の増減によって、バランスが変化してしまう生態系もある。 自然浄化:河川や海に有機物などを含む汚水が流入すると、その量が少ない時は大量の水による希釈や分解者による分解などにより、汚濁物が減少する。 富栄養化:河川や海に硝酸塩やリン酸塩などの無機塩類が流入し、その濃度が高くなること。 水の華:富栄養化によりプランクトンの異常な増殖が引き起こされ、淡水で水面が青緑色になる現象。 赤潮:富栄養化によりプランクトンの異常な増殖が引き起こされ、海域で海面が赤褐色に変化する現象。 生物濃縮:生体内において、ある物質の濃度が周囲の環境に比べて高くなること。 温室効果ガス:二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、フロンなど、地球表面から放射される赤外線を吸収し、再び地球表面に放射しているガス。 里山:人里とその周辺にある農地や草地、雑木林などがまとまった一帯。里山では、下草刈りや適度な伐採といった人間の継続的な働きかけで、多様な生物が生息できる環境が維持されてきた。 ページのトップへ戻る
①混合物と純物質 混合物:海水のように、何種類かの物質が混合したもの。 純物質:水や塩化ナトリウム、窒素、酸素など、ただ1種類の物質からできており、ろ過より蒸留などの方法ではこれ以上、他の物質に分けられないもの。 融点:固体が溶けて液体になる温度。 凝固点:液体が固まって固体になる温度。純物質では融点と凝固点は同じ温度である。 沸騰:液体の内部からも蒸発が起きる現象。 沸点:沸騰する時の温度。 溶解度:一定量の溶媒に溶ける物質の最大量。普通、水100gに溶ける物質の質量(g)の数値で表すことが多い。 密度:単位体積当たりの物質の質量。g/cm3、g/mL、g/Lなどで表される。固体の密度はgcm3で表されることが多い。 分離:混合物から純物質を取り出す操作。 精製:少量の不純物を取り除き、より純粋(高純度)な物質を得る操作。 ろ過:物質を作る粒子の大きさの違いを利用し、ろ紙などの目(繊維の隙間)を通過できるかどうかで混合物を分離する操作。 再結晶:不純物を含む物質を溶媒(水など)に溶かし、溶解度の差を利用して1つの成分として析出させ、純物質として分離・精製する操作。 蒸留:液体を含む混合物を熱して沸騰させ、その蒸気を冷やして沸点の低い成分を分離する操作。 分留(分別蒸留):沸点差の比較的小さい液体混合物を蒸留する時に、適当な温度間隔で区切って抽出液を取り出すこと。 抽出:溶媒への溶解度の差を利用し、混合物から特定物質を溶かし出す操作。 クロマトグラフィー:種々の成分を含む混合物を適当な溶媒と共にろ紙やシリカゲルなどの中を移動(展開)させると、各成分ごとにろ紙やシリカゲルに吸着する力が異なるために移動速度に差が生じ、少しずつ分離される現象を利用して、物質を分離・精製する操作。 ペーパークラマトグラフィー:ろ紙を用いるクラマトグラフィー。 ②元素・単体・化合物 元素:物質を構成する原子の種類。元素記号で表される。 炎色反応:ナトリウムを元素として含む化合物を炎の中に入れると、炎が黄色になる現象のように、物質を高温の炎の中で熱した時に炎が呈色する現象。 単体:純物質のうち、1種類の元素のみでできているもの。 同素体:同じ1種類の元素でできていながら、性質の異なる単体。ダイヤモンド(C)と黒鉛(C)とフラーレン(C)とカーボンナノチューブ(C)、酸素(O)とオゾン(O)、黄リン(P)と赤リン(P)、斜方硫黄(S)と単斜硫黄(S)とゴム状硫黄(S)など。 化合物:水や塩化ナトリウムのように、2種類以上の元素でできている純物質。 ③粒子の熱運動と物質の状態 拡散:物質の構成粒子が自然に散らばっていく現象。 熱運動:物質を構成する粒子のランダムな運動。 絶対零度:-273℃。この温度に近づくと、粒子はほとんど熱運動しなくなり、これより低い温度は無い。 絶対温度(熱力学温度):絶対零度を原点とし、セルシウス温度(摂氏温度)と同じ目盛間隔で表した温度。単位記号はK(ケルビン)。絶対温度T〔K〕とセルシウス温度t〔℃〕の関係はT=t+273。 物質の三態:固体、液体、気体の3つの状態。 状態変化:温度や圧力が変化した時、固体、液体、気体の間で物質の状態が変化すること。 融解:固体から液体への変化。 凝固:液体から固体への変化。 蒸発:液体から気体への変化。 凝縮:気体から液体への変化。 昇華:固体から直接気体になる変化。 物理変化:状態変化のように、物質そのものは変化せずに状態のみが変わる変化。 化学変化:水の分解や水素と酸素の化合のように、ある物質が別の物質に変わること。
①原子の構造と電子配置 原子:中心にある原子核と、その周りに存在するいくつかの電子で構成されており、原子核と電子の間には電気的な引力が働いている。 電荷:物質や粒子が帯びている電気量。 C(クーロン):電気量の単位記号。1C=1A(アンペア)の電流が1秒間に運ぶ電気量。 原子核:正の電荷を持ついくつかの電子と、電荷を持たないいくつかの中性子からできている。 電気素量:陽子1個の電荷で、電気量の最小単位。1.602 ×10C-19(クーロン)。 原子番号:原子核中の陽子の数。 質量数:原子核中の陽子と中性子の数の和。 同位体(アイソトープ):原子番号(陽子の数)は同じでも、中性子の数が異なるために質量数が異なる原子。質量数1の1H(軽水素)、質量数2の2H(重水素)、質量数3の3H(三重水素)など。 放射性同位体(ラジオアイソトープ):放射線を放って他の原子に変化する同位体。 放射能:壊変(かいへん、放射性崩壊)によって放射線を出す性質。 半減期:放射性同位体が壊れて量が半分になる時間。例えば、14C(炭素14)の半減期は5730年である。 電子殻(でんしかく):原子核の周りの電子軌道。原子核に近い内側からK殻、L殻、M殻、N殻…と言う。 電子配置:電子の配列の仕方。 最外殻電子(さいがいかくでんし):原子中で最も外側の電子殻(最外電子殻)にある電子。 価電子:原子がイオンになったり、互いに結びつく(化学結合)時に重要な役割を果たす最外殻電子。L殻とM殻では1~7個が価電子になる。また、金属では自由電子がこれに相当する。一般に価電子はその原子の化学的性質を決定し、価電子の数が同じ原子同士はよく似た性質を示す。 希ガス(貴ガス):ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなど。電子配置が非常に安定しているため、原子同士が結びつかず、単原子分子として存在していて、化合物を作りにくい。 ②イオンの生成 電解質:水に溶かした時、塩化ナトリウムや塩化銅(Ⅱ)などのように水溶液が電気を通す物質。 非電解質:スクロースやエタノールなどのように水溶液が電気を通さない物質。 電離:物質が水溶液中で、正(+)の電荷を持つ粒子と負(-)の電荷を持つ粒子に分かれること。 陽イオン:電離によって生じる正の電荷を持つ粒子。 陰イオン:電離によって生じる負の電荷を持つ粒子。 陽性:価電子を失って陽イオンになりやすい性質。 陰性:電子を受け入れて陰イオンになりやすい性質。 第一イオン化エネルギー:原子から電子1個を取り去って1価の陽イオンにするために必要な最小のエネルギー。さらに2個目の電子を取り去るために必要な最小のエネルギーを第二イオン化エネルギーと言う。一般にイオン化エネルギーの小さい原子ほど陽イオンになりやすく、陽性が強い。 電子親和力:原子が電子1個を受け取って1価の陰イオンになる時に放出されるエネルギー。一般に電子親和力の大きい原子は陰イオンになりやすく、陰性が強い。 価数:原子がイオンになる時、授受した電子の数。価数が1、2、3…の時、順に1価、2価、3価…と言う。 イオン式:元素記号の右上に各イオンの価数と電荷の種類(+、-)を書き添えた式。アルミニウムイオンAl3+など。 化学式:イオン式や組成式、分子式、構造式など、元素記号を使って物質の組成や構造を表した式。 単原子イオン:原子1個から生じるイオン。 多原子イオン:原子が2個以上結びついた集まり(原子団)が、全体として電子が不足して陽イオンになったり、全体として電子が余分になって陰イオンになったもの。 ③元素の周期表 元素の周期律:元素の性質の周期性。元素を原子番号の順に並べると、イオン化エネルギー、生じる単原子イオンの価数、原子やイオンの大きさ、単体の融点や沸点、生じる化合物の組成など、性質のよく似た元素が周期的に現れる。 元素の周期表:元素を原子番号の順に並べ、周期律に従って、性質のよく似た元素を同じ縦の列に並べた表。メンデレーエフによって作られた。 周期:周期表の横の行。 族:周期表の縦の列。 同族元素:同じ族に属する元素群。 典型元素:元素の周期律によく従う1、2、12~18族の元素。金属元素と非金属元素がほぼ半分ずつ含まれる。 アルカリ金属:水素H以外の1族の元素。 アルカリ土類金属: 2族元素。 希土類元素:アクチノイド元素を除く3族の17元素。 ハロゲン:17族元素。 希ガス(貴ガス):18族元素。 遷移元素:周期表で中央部に位置している3~11族の元素。全て金属元素。原子の最外殻電子の数が普通1~2個であまり変化せず、そのため周期表で隣り合う元素同士で互いに化学的性質がよく似ていることが多い。 金属元素:元素のうち、単体が金属光沢を持ち、電気や熱をよく導くもの。元素の8割を占めている。陽性が強く、化学物を作る時に陽イオンになりやすい。 非金属元素:金属元素以外の元素。全て典型元素。フッ素F、酸素O、塩素Clなどの原子は陰イオンになりやすく、希ガスを除く非金属元素は陰性が強いものが多い。
①イオン結合 イオン結合:陽イオンと陰イオンが静電気的な引力により、互いに引き合って結びつく化学結合。 組成式:物質を構成する元素の種類と、それぞれの原子(原子団)の数を最も簡単な整数比で表した化学式。塩化ナトリウムNaClなど。 塩化ナトリウムNaCl:海水中に最も多く含まれる塩分。精製されて食卓塩として用いられる他、アンモニアソーダ法や水酸化ナトリウム・塩素の製造など、化学工業の重要な原料の1つである。 塩化カルシウムCaCl2:豆腐の製造において、凝固剤として用いられるにがりの成分の1つ。除湿剤や道路の凍結防止剤などにも使用される。 炭酸ナトリウムNa2CO3:炭酸ソーダ。ガラスやセッケンなどの原料として重要であり、アンモニアソーダ法(ソルベー法)で作られる。 炭酸水素ナトリウムNaHCO3:重曹(じゅうそう)。アンモニアソーダ法で作られる。医薬品(胃酸の中和)や洗剤に利用される他、ふくらし粉や石油化学コンビなーどの油火災への消火剤などに用いられる。 炭酸カルシウムCaCO3:貝殻や石灰石などの成分として自然界に多く存在しており、板書用の硬いチョークにも使われている。実験室で二酸化炭素を発生させる時によく用いられる。 硫酸バリウムBaSO4:X線診断の造影剤として用いられる。 結晶:原子や分子、イオンなどの粒子が規則正しく配列した固体。 イオン結晶:イオン結合からなる物質の結晶。 ②共有結合 分子:いくつかの原子が結びついてできた、物質を構成する粒子の1つ。 分子式:分子を構成する原子の種類とその数を示した式。水分子H2Oなど。 共有結合:原子間で出し合った価電子を共有してできる結合。希ガス以外の非金属元素の原子同士が結びつく時は、それぞれ価電子を何個かずつ出し合って、それらを共有し、同じ周期にある希ガスと同じ電子配置になることが多い。 水素分子H2:水素原子2個が結びついて水素分子ができる時は、両方の水素原子が価電子1個ずつを出し合い、それらを共有して安定化する。水素分子中の水素原子は、2つともヘリウム原子Heと同じ電子配置となる。 水分子H2O:2個の水素原子Hはそれぞれ1個の電子を、酸素原子Oは2個の電子を出して互いに共有し合い、安定化する。この時、水分子中の水素原子は2つともヘリウム原子Heと同じ電子配置、酸素原子はネオン原子Neと同じ電子配置になっている。なお、酸素原子の価電子6個中の4個は結合に直接関与しない。 電子対:電子2個で作る1組の対。第2、3周期の原子では、価電子が1~4個の時は電子殻中の電子は単独で存在するが、5個以上になると、2個で1組の対(電子対)を作るようになり、最外殻には最大で4組の電子対が存在する。 不対電子:対を作っていない電子。 電子式:不対電子の数が最大になるように、元素記号の周りに最外殻の電子を黒点で配置した式。ナトリウムNa・、マグネシウム・Mg・など。 共有電子対:原子同士が不対電子を出し合い、生じた電子対を共有してできる共有結合において、結合に使われている電子対のこと。 非共有電子対:結合する前から対になっていて、原子が共有結合する時に結合に関与しない電子対。 構造式:分子内の各原子の結合の様子を示すために、原子間で共有された1対の電子対を1本の線で表した化学式。水素分子H2の構造式はH−H、塩化水素分子HClはH−Clと表される。 価標:構造式において、原子間で共有された電子対を表した線のこと。 原子価:価標の本数。各原子が共有結合する時に使う価電子の数に等しい。 単結合:水素分子H2や塩化水素分子HClなどのように、原子同士が1対の共有電子対で結びついており、1本の価標で結ばれるような共有結合。 二重結合:原子同士が2対の共有電子対で結びついており、2本の価標で結ばれるような共有結合。 三重結合:原子同士が3対の共有電子対で結びついており、3本の価標で結ばれるような共有結合。 配位結合:結合する原子間で、一方の原子から非共有電子対が提供され、それを両方の原子が互いに共有してできる結合。アンモニアが酸と中和する時、アンモニウムイオンNH4+が生じるが、この時、アンモニア分子中の窒素原子Nは酸から出された水素イオンH+に非共有電子対を一方的に与えて結びつく。配位結合は普通の共有結合とでき方は異なるが、できてしまえば共有結合と同じになり、アンモニウムイオン中の4本のN−H結合のうち、どれが配位結合によるものかは区別できない。 オキソニウムイオンH3O+:水素イオンH+は水溶液中では単独で存在せず、水分子H2Oと配位結合して、オキソニウムイオンH3O+となって存在している。 錯イオン:金属元素の陽イオン(中心イオン)に非共有電子対を持った数個の分子や陰イオンが配位結合してできたイオン。銀イオンAg+の場合、2個のアンモニア分子NH3が配位結合してジアンミン酸銀(Ⅰ)イオン[Ag(NH3)2]+となる。 配位子:金属イオンに配位結合する分子やイオンのこと。 電気陰性度:原子が結合に使われる電子を引きつける強さを相対的に示す尺度。異なる原子が結合する時、各原子の原子核の正電荷や電子配置が異なるため、それぞれの原子が結合に使われる電子を引きつける強さが異なる。一般に、周期表で希ガスを除く右上側にある非金属元素ほど電気陰性度が大きく、陰性が強い。 極性:分子または化学結合において、電荷の偏りがあること。例えば、水分子H2O中のO H結合では、共有電子対は電気陰性度の大きい酸素原子O側に偏って存在し、水素原子Hは正の電荷、O原子は負の電荷をそれぞれいくらか帯びている。結合する原子間の電気陰性度の差が大きいほど、極性は大きくなる。金属元素の原子と非金属元素の原子との間の結合のように、電気陰性度の差が極端に大きい場合は、価電子が一方の原子に移動したイオン結合となる。 極性分子:分子全体で電荷の偏りが生じている分子。塩化水素分子HCl、水分子H2O(折れ線形)、アンモニア分子NH3(三角錐形)など。 無極性分子:同種の原子または電気陰性度がほぼ等しい原子同士が2個共有結合してできた分子や、分子の形の対称性により、結合に極性があっても、分子全体として電荷の偏りがない分子。水素分子H2、CO2(直線形)、CH4(正四面体形)など。 分子結晶:分子が規則正しく配列してできた固体。分子結晶の融点は一般に低く、軟らかくてもろい。分子結晶の中にはヨウ素I2やドライアイス(二酸化炭素の固体)のように昇華するものもある。 水素H2:最も軽い気体であり、相手を還元する力が強い。工業的には天然ガスと水から触媒を用いて作られる。 酸素O2:空気中に21%(体積比)程度含まれ、相手を酸化する力が強い。工業的には英気体空気の分留によって作られる。 窒素N2:空気中に78%(体積比)程度含まれ、反応性は乏しい。高温高圧・触媒の下で水素と反応させて生じるアンモニアは、窒素肥料の原料になる。工業的には英気体空気の分留によって作られる。 塩素Cl2:黄緑色で刺激臭のある有毒気体であり、漂白・殺菌作用を持つため、水道水の殺菌に使われている。工業的には食塩水の電気分解によって作られる。 ヨウ素I2:黒紫色で金属のような光沢のある固体で、温めると容易に昇華する。殺菌作用を持つため、うがい薬や消毒薬に利用される。 水H2O:自然界に大量に存在し、生物の体内にも多く含まれ、ヒトの体の6割(質量比)を占める。極性分子で、他の極性分子やイオンでできた多くの物質を溶かす。大気中の水蒸気は赤外線を吸収する性質があり、地球温暖化の一因と考えられている。 塩化水素HCl:空気よりやや重い、無色の有毒気体で、刺激臭がある。極性分子で水に非常に溶けやすく、水溶液は塩酸と呼ばれる。塩酸は亜鉛ZnやマグネシウムMと反応して水素H2を発生させる。塩化水素は工業的には水素と塩素を直接反応させて作られる。 アンモニアNH3:空気より軽い、無色の有毒気体で、特有の刺激臭がある。窒素化合物の合成原料として用いられる。水に非常によく溶けてアンモニア水となり、弱いアルカリ性(塩基性)を示す。工業的には鉄を主成分とする触媒を用いて、水素と窒素から合成される。 一酸化炭素CO:無色無臭の有毒気体で、有機物の不完全燃焼で生じる。一酸化炭素は酸素の約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすいため、低濃度でも一酸化炭素中毒になる。 二酸化炭素CO2:空気より重い、無色無臭の気体で、水に少し溶けて炭酸水になり、弱い酸性を示す。石灰水に通じると、炭酸カルシウムCaCO3の白い沈殿を生じる。大気中の二酸化炭素は赤外線を吸収する性質があり、地球温暖化の一因と考えられている。 窒素酸化物:一酸化窒素NO、二酸化窒素NO2などがあり、光化学スモッグや酸性雨との関連が深い。 有機化合物:炭素を含む化合物。CO、CO2、炭酸塩、シアン化物などは無機化合物である。 メタンCH4:空気より軽い、無色無臭の気体で、天然ガスの主成分であり、都市ガスに使われる。大気中のメタンは赤外線を吸収する性質があり、地球温暖化の一因と考えられている。 プロパンC3H8:空気より重い、無色無臭の気体で、圧力を加えると容易に液体になる。都市ガスが整備されていない地域では、燃料としてボンベで供給されている。 エチレンC2H4:無色で、かすかに甘い臭いがあり、麻酔性のある気体で、分子内にC=Cの二重結合を含む。工業的に石油から大量に作られており、多くの有機化合物の合成原料として重要である。また、植物の成長ホルモンの1つで、果実が熟す時に放出される。 アセチレンC2H2:無色無臭の気体で、分子内にC≡Cの三重結合を含む。酸素との混合気体による炎は非常に高温になるので、金属の切断や溶接に用いられる。 ヘキサンC6H14:かすかに特異臭のある無色の液体で、ガソリンなどに多く含まれる。比較的安定で、多くの無極性物質を溶かす溶媒(有機溶媒)として用いられる。 エタノールC2H5OH:無色の液体で、酒類に含まれる飲用のものはデンプンやグルコースの発酵(アルコール発酵)で作られる。工業的にはエチレンと水から大量に合成されており、溶媒や消毒薬、燃料などに用いられる。 酢酸CH3COOH:無色の液体で、刺激臭がある。食酢中に数%服有れており、食酢のほとんどはエタノールの発酵(酢酸発酵)で作られる。 ベンゼンC6H6:無色で特異臭のある液体で、蒸気は有毒である。分子を構成する炭素原子6個が正六角形に並んでいるため、無極性分子であり、水には溶けにくい。染料や医薬品の合成原料として重要である。 トルエンC7H8:メチルベンゼン。無色の液体で、ベンゼンよりはやや毒性が低い。ベンゼン分子と構造はよく似ているため、性質もよく似ている。塗料や接着剤の溶剤に利用される。 高分子化合物:分子が次々と結合して巨大な分子になって(重合)できた物質。繊維やプラスチック(合成樹脂)として利用されている。 ポリエチレン(PE):エチレンCH2=CH2を原料として作られる物質で、エチレン中の炭素原子が他のエチレン分子の炭素原子と結合する時、二重結合が単結合となり、これが繰り返されて多数のエチレン分子が結びついて(付加重合)作られる。 ポリエチレンテレフタラート(PET):テレフタル酸とエチレングリコール(1,2-エタンジオール)を原料として作られる物質。互いの分子の間で水分子が取れて結合ができ、これが繰り返されて多数の分子が結びついて(縮合重合)生じる。ポリエステル繊維やペットボトルのようなプラスチックとして利用されている。 共有結合の結晶(共有結晶):原子間の共有結合によって強く結ばれた結晶。 ダイヤモンドC:それぞれの炭素原子が他の4個の炭素原子と正四面体を作るように共有結合している。天然で最も硬い物質で、石材やコンクリートの切断に使われる他、不純物の少ない結晶は宝石に加工される。 黒鉛C:グラファイト。それぞれの炭素原子が他の3個の炭素原子と共有結合して、網目状の平面構造を作り、それが何層も重なった構造をしている。この層の間は弱い引力しか働かず、層がずれやすいので、軟らかい。そのため、鉛筆の芯に利用される。また、炭素原子の4個の価電子のうちの1個は平面に沿って動くことができるので、電気をよく通し、電池の正極の集電棒」や電気分解の電極などに使われる。 ケイ素Si:岩石や鉱物の成分元素として、地殻中に酸素に次いで多量に存在する。単体は天然には存在せず、酸化物を電気炉で還元して作られる。結晶はダイヤモンドと同様の構造で、灰色で金属光沢があり、半導体の性質を示すため、高純度の単体はコンピュータのIC(集積回路)や太陽電池などのエレクトロニクス分野で、重要な材料として広く用いられている。 半導体:金属のような良導体とダイヤモンドのような絶縁体(不導体)の中間の電気伝導性を示すもの。 二酸化ケイ素SiO2:珪砂(けいしゃ)の主成分で、石英(水晶)などの結晶を作る。いくつかの結晶構造を取るが、そのうちの1つはダイヤモンドの炭素原子をケイ素原子で置き換え、けさらにその各ケイ素原子間に酸素原子が入り込んだ構造になっており、各原子は全て共有結合で結びついている。結晶は硬くて融点も高く、薬品にも侵されにくい人工の結晶は時計の発振器などに使われる。高純度の二酸化ケイ素を融解後に冷やしてできる石英ガラスは、プリズムやランプ管などに使われ、さらに高純度なものは光ファイバーの原料になる。 ③金属結合 自由電子:金属結晶では金属元素の原子は規則正しく配列しており、金属原子のイオン化エネルギーは一般に小さく、その価電子は特定の原子内には留まらず、結晶内の全ての原子に共有される形で自由に結晶中を動き回ることができる。 金属結合:自由電子による金属原子同士の化学結合。 金属:特有の光沢を持ち、電気や熱をよく伝える。叩くと薄く広がる性質(展性)や引っ張ると長く延びる性質(延性)を持つ。 鉄Fe:最も身近な金属の1つで、鉄鉱石を還元して得られる。湿った空気中では容易に錆(さび)を生じるが、鉄とクロムCr、ニッケルNiの合金であるステンレス鋼は錆びにくい。 銅Cu:特有の赤味を帯びた金属で、黄銅鉱などの銅鉱石を還元して得られる。電気伝導性が銀Agの次に高く、比較的安価であるため、電気器具の配線や部品などとして広く利用されている。 アルミニウムAl:銀白色の金属で、ボーキサイトから精製されたアルミナ(酸化アルミニウムAl2O3)を還元して作る。一円硬貨や箔、缶、鍋、窓枠など、様々な用途に使用されている。ジュラルミンなどのアルミニウム合金は、軽量で加工しやすい。アルミニウムの製造には大量の電力を必要とするため、アルミニウム製品はリサイクルが大切である。 水銀Hg:銀白色で、常温常圧で液体として存在する唯一の金属であり、硫化物を還元して得られる。蛍光灯や水銀灯などに利用される。他の多くの金属とアマルガムと呼ばれる合金を作る。
①原子量・分子量・式量 アボガドロ数:原子の相対質量の基準である質量数12の炭素原子12C12gに含まれる炭素原子の数N≒6.02×1023。 1モル(単位記号mol):アボガドロ数の粒子の集団。 物質量:モルを単位として表した物質の量(物理量)。 アボガドロ定数:単位物質量(1mol)当たりの粒子数NA=6.02×1023/mol。 原子の相対質量:種々の原子の質量は質量数12の炭素原子12Cの質量を12とした時の相対質量で表す。これによると、各原子の相対質量はほぼ質量数に近い値になる。 原子量:各元素の同位体の相対質量と存在比から求められる原子の平均相対質量。原子量は相対値なので、単位は無い。 分子量:原子量と同じ基準に従って表した分子の平均相対質量。 式量:イオン式量、組成式量。イオンやイオンでできた物質、共有結合の結晶などのように、イオン式や組成式で表される物質における、式中の全構成原子の原子量の総和。分子量の代わりに用いる。 モル質量:物質1mol当たりの質量。 アボガドロの法則:物質が気体の時、その体積と分子数の間には「同温同圧の下で、同体積の気体には、気体の種類に関係なく、同数の分子が含まれる」という関係がある。 標準状態:温度0℃、通常の大気圧(通常大気圧、常圧。1.013×105Pa〔パスカル〕=1atm〔気圧〕)の状態。 モル体積:物体1molが占める体積。気体のモル体積は、標準状態でではその種類に関係なく、ほぼ22.4L/molである。 溶解:各種物質が液体に溶けて溶液となること。 溶液:溶解によってできた液体。 溶質:溶液において、溶けている物質。 溶媒:溶液において、溶かしている物質。溶媒が水の場合の溶液を特に水溶液と言う。 濃度:溶液中に溶けている溶質の割合。 質量パーセント濃度:溶液中に溶けている溶質の質量の割合をパーセント(百分率)で示した濃度(単位記号%)。 モル濃度:溶液1L中に溶けている溶質の量を物質量〔mol〕で示した濃度(単位記号はmol/L)。 飽和溶液:一定量の溶媒に溶ける限度まで溶質を溶かした溶液。 溶解度:溶解する溶質の最大値。 水和物:結晶中に一定の割合で水分子(水和水、結晶水と言う)を含む化合物。水和物の水への溶解度は、無水物(無水塩)として表す。例えば、硫酸銅(Ⅱ)五水和物CuSO4・5H2Oの溶解度は無水物である硫酸銅(Ⅱ)CuSO4の質量〔g〕の値として表す。 溶解度曲線:溶解度と温度の関係を表したグラフ。 ②化学反応式 反応物:化学変化において、反応する物質。 生成物:化学変化において、生じる物質。 化学反応式:反応式。化学変化において、反応物と生成物の関係を化学式を用いて示した式。 (水素と酸素の反応)2H2+O2→2H2O (エタンの燃焼)2C2H6+7O2→4CO2+6H2O 係数:各化学式の前につけられる、原子や分子の数の比を示す数値。 化学反応式の作り方:反応物の化学式を左辺、生成物の化学式を右辺に書き、化学変化の向き(反応物から生成物)を示す矢印「→」で両辺を結ぶ。両辺で各原子の数が等しくなるように係数を決める。係数は最も簡単な整数の比になるようにし、係数が1になる場合は省略する。 未定係数法:係数が簡単に決められない化学反応式では、係数を未知数とし、両辺の原子の数に関する連立方程式を作り、その値を求めること。 (アンモニアと酸素の反応)aNH3+bO2→cNO+dH2Oとおいて、a:b:c:d=4:5:4:6より、4NH3+5O2→4NO+6H2Oとなる。 イオン反応式:イオンが関与する反応において、反応しないイオンを省略した化学反応式。 (硝酸銀と塩化ナトリウムの反応による塩化銀の沈殿)AgNO3+NaCl→AgCl↓+NaNO3 質量保存の法則:1774年、ラボアジエ、「化学反応の前後で物質の質量の総和は変化しない」。 定比例の法則:1799年、プルースト、「化合物の構成元素の質量比は化合物の作り方によらず、一定である」。 倍数比例の法則:1803年、ドルトン、「2種類の元素でできた化合物が複数ある時、1つの元素の一定量と化合している他の元素の質量は、簡単な整数比になる」。 原子説:ドルトンは質量保存の法則、定比例の法則を説明できるような原子説をほぼ同時期に提唱した。 気体反応の法則:1808年、ゲーリュサック、「気体の反応では、反応する気体及び生成する気体の体積比は、同温同圧の下で簡単な整数比になる」。ドルトンの原子説では説明できなかった。 分子説:1811年、アボガドロが提唱。その一部が「同温同圧で同体積の気体は、種類に関係なく、同数の分子を含む」というアボガドロの法則であった。気体反応の法則を矛盾なく説明した。
①酸と塩基 酸性:酸味があり、青色リトマス紙を赤色に変える性質。 酸:酸性を示す物質。酸が酸性を示すのは、水に溶けると電離して水素イオンH+を生じるためである。 塩基性(アルカリ性):赤色リトマス紙を青色に変え、酸と反応してその性質を打ち消すような性質。 塩基(アルカリ):塩基性を示す物質。塩基が塩基性を示すのは、水に溶けると電離して水酸化物イオンOH- を生じるためである。水酸化物イオンは水素イオン(オキソニウムイオン)と結びついて水分子が生じるので、酸の性質を打ち消すことができる(中和)。 アレニウスの酸・塩基の定義:酸とは水に溶けて水素イオンH+を生じる物質で、塩基とは水に溶けて水酸化物イオンOH-を生じる物質のことである。 ブレンステッド・ローリーの酸・塩基の定義:酸とは水素イオンH+を相手に与える物質のことで、塩基とは水素イオンH+を受け取る物質のことである。 価数:酸1分子中に含まれる水素原子Hのうち、水素イオンH+として電離できる数をその酸の価数と言う。価数に応じて、これらの酸を1価の酸、2価の酸、…と言う。また、塩基では、組成式に含まれる水酸化物イオンOH-、または受け取ることができる水素イオンH+の数がその塩基の価数であり、価数に応じて1価の塩基、2価の塩基、…と言う。 電離度:酸や塩基のような電解質が水に溶けた時、溶けている電解質に対する電離した電解質の割合。 電離度α=電離した電解質の物質量(または濃度)/溶けている電解質の物質量(または濃度) 強酸:濃度がある程度大きい時でも、電離度が1に近い酸。塩酸HCl(1価)、硝酸HNO3(1価)、硫酸H2SO4(2価)など。 強塩基:濃度がある程度大きい時でも、電離度が1に近い塩基。水酸化ナトリウムNaOH(1価)、水酸化カリウムKOH(1価)、水酸化カルシウムCa(OH)2(2価)、水酸化バリウムBa(OH)2(2価)など。 弱酸:電離度が1より著しく小さい酸。酢酸CH3COOH(1価)、炭酸H2CO3(2価)、リン酸H3PO4(3価)など。 弱塩基:電離度が1より著しく小さい塩基。アンモニアNH3(1価)、水酸化銅(Ⅱ)Cu(OH)2(2価)、水酸化マグネシウムMg(OH)2(2価)、水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3(3価)など。 ②水の電離とpH pH(ピーエイチ):水素イオン指数。水溶液の酸性や塩基性の程度を示す数値。水素イオン濃度[H+]の大きさを示す。pH試験紙やpHメーターによって測定できる。[H+]=1.0×10〔mol/L〕の時、pH=xとなる。 酸性:[H+]>1.0×10-7〔mol/L〕>[OH-] 中性:[H+]=1.0×10-7〔mol/L〕=[OH-] 塩基性:[H+]<1.0×10-7〔mol/L〕<[OH-] 指示薬:酸塩基指示薬、pH指示薬。pHの変化により色調が変わる色素。 変色域:色調が変わるpHの範囲。 フェノールフタレイン:pH8.0~9.8が変色域であり、pH<8.0で無色、pH>9.8で赤色となる。 メチルオレンジ:pH3.1~4.4が変色域であり、pH<3.1で赤色、pH>4.4で黄色となる。 ③酸・塩基の中和と塩 中和:酸と塩基が互いの性質を打ち消し合う反応。 塩(えん):NaClのような、酸の陰イオンと塩基の陽イオンが結びついた化合物。 中和点:酸と塩基が過不足なく中和する点。酸と塩基が過不足なく中和する時、次式の関係が成り立つ。 (酸の価数)×(酸の物質量)=(塩基の価数)×(塩基の物質量) 中和滴定:濃度不明の酸(塩基)を一定体積取り、これに濃度既知の塩基(酸)を加えていき、ちょうど中和するまでに要した塩基(酸)の溶液の体積を量ると、酸(塩基)の濃度を計算できる。酸や塩基の濃度や物質量を求める、このような操作を中和滴定と言う。モル濃度C1〔mol/L〕、体積V1〔mL〕のa価の酸と、モル濃度C2〔mol/L〕、体積V2〔mL〕のb価の塩基が過不足なく中和する時、次式が成り立つ。 a×〔mol〕=b×〔mol〕 滴定曲線:中和滴定の進行に伴う、加えた酸や塩基の水溶液の体積と、混合水溶液のpHとの関係を表した曲線。
①酸化と還元 酸化:物質が酸素と結びついた時、水素を失った時、電子を失った時、酸化されたと言う。 還元:物質が酸素を失った時、水素と結びついた時、電子を得た時、還元されたと言う。 酸化還元反応:酸化と還元は必ず同時に起こる。 酸化数:物質中のそれぞれの原子に対する酸化状態(電荷の数)を表す。原子が酸化された場合は酸化数が増加し、還元された場合は酸化数が減少する。 酸化数を決める原則: (1)単体の原子の酸化数は0とする。 (2)単原子イオンの酸化数はイオンの電荷に等しい。 (3)化合物中のH原子の酸化数は+1、O原子の酸化数は-2とする。ただし、過酸化物中のO原子の酸化数は例外的に-1とする。 (4)電気的に中性の化合物では、構成原子の酸化数の総和は0とする。 (5)多原子イオンでは、構成原子の酸化数の総和はそのイオンの電荷に等しい。 ②酸化剤と還元剤 還元剤:酸化還元反応において、電子を与え、相手の物質を還元する物質。還元剤自身は酸化される。 酸化剤:酸化還元反応において、電子を奪い、相手の物質を酸化する物質。酸化剤自身は還元される。 酸化還元反応式:酸化還元反応を表す化学反応式。 (過酸化水素水H2O2〔酸化剤〕とヨウ化カリウムKI〔還元剤〕の反応) 2KI+H2O+2H2SO4→I2+2H2O+K2SO4 (過酸化水素水H2O2〔還元剤〕と過マンガン酸カリウムKMnO4〔酸化剤〕の反応) 5H2O2+2KMnO4+3H2SO4→5O2+2MnSO4+K2SO4+8H2O 酸化還元滴定:酸化剤と還元剤は一定の物質量比で反応することを利用して、中和滴定と同様の動作で酸化剤や還元剤の物質量や濃度が求められる。 ③金属の酸化還元反応 金属のイオン化傾向:単体の金属原子が水溶液中で電子e- を放出し(酸化されて)、陽イオンになろうとする性質。 金属のイオン化列:各種の金属をイオン化傾向の大きな順に並べたもの。 (大)Li, K, Ca, Na, Mg, Al, Zn, Fe, Ni, Sn, Pb, (H), Cu, Hg, Ag, Pt, Au(小) 不動態:金属が腐食される条件にありながら、腐食を起こさない状態。Al, Fe, Niなどは濃硝酸と反応すると、難溶の酸化物の被膜を生じて不動態となり、それ以上、反応が進まない。 ④酸化還元反応と人間生活 電池:酸化還元反応によって放出されるエネルギーを、熱や光のエネルギーではなく、電気エネルギーとして取り出すための装置。電池では酸化と還元がそれぞれ別の場所(負極と正極)で起きており、その間を導線で結ぶと授受される電子を電流として取り出せる。電池の負極側では還元剤が酸化され、正極側では酸化剤が還元される。 放電:機器に電池を接続し、電池から電流を取り出すこと。 充電:放電した電池に、放電と逆向きの電流を外部から流すと、放電による生成物が電極付近にある時、電極で放電と逆の反応が起こる。 二次電池:蓄電池。充電して繰り返し使用できる電池。 一次電池:充電による再使用ができない電池。 ページのトップへ戻る
① 電流と電圧 電流~電気の流れ。滝で言えば、水流に相当。単位はアンペア〔A〕。1A=1秒間に1C(クーロン)の電荷が流れる時の電流の大きさ。 電気量~電荷(原子核は正の電気、電子は負の電気を持っている)の量。単位はクーロン〔C〕。 電気素量~電子の電気量の絶対値。1.6×10-19C=e 電圧~電気の流れを発生させる能力。滝で言えば、滝の高さに相当。単位はボルト〔V〕。 起電力~電流が流れていない時の電池の両端の電圧。電流が流れると、電池の内部抵抗のため、電圧降下が生じる。 電力~(消費)電力P〔W〕は電気回路に供給された電流I〔A〕と電圧V〔V〕の積で定義され、ワット〔W〕という単位で表わす。 P=I×V 直流電源~電池のように、電圧が時間変化しない電源。 交流電源~規則的に正になったり負になったりを繰り返している家庭用電源のように、電圧が時間変化する電源。 周波数~交流電源が1秒間に変化を繰り返す回数を周波数fと呼ぶ。単位はヘルツ〔Hz〕で表わす。東日本地域では50Hz、西日本地域では60Hzである。 ②電気抵抗 電気抵抗~電流の流れにくさ。単位はオーム〔Ω〕。電気抵抗が大きいほど、小さな電流しか流れない。 オームの法則~電圧と電流が比例関係にある。比例定数Rを電気抵抗と呼ぶ。 V=R×I 合成抵抗~2種類の電気抵抗を直列接続すると、電流は2つの電気抵抗を通らなければならないので、電気抵抗は大きくなるが、並列接続すると、電流は両方通ることができるので、電気抵抗は小さくなる。 (1)直列接続:V=V1+V2からIR+IR1+IR2より、R=R1+R2となる。 (2)並列接続:I=I1+I2から=+より=+となる。 電熱器の原理~抵抗の両端の電圧はV=R×Iであるから、抵抗において電力はP=VI=I2Rが消費される。消費された電力は熱に変わり、この熱を利用して物を温めるのが電熱器(電気湯沸器、ドライヤーなど)である。 高電圧送電~送電線にも抵抗があるために、途中で電力は無駄に熱に変わってしまう。無駄な発熱は電流の大きさだけで決まるので、送電線を流れる電流だけで決まるので、送電線を流れる電流を小さくするために50万Vにも及ぶ高電圧で送電している。送電には交流が用いられているが、これは変圧器を用いて電圧を容易に上げ下げできるからで、家庭に供給される時には電圧は100Vに下げられている。 ③電気と磁気 磁界~磁石相互、電流相互、あるいは磁石と電流との間には力が働くが、この力が働く場のこと。磁場とも言う。例えば、磁石はN極からS極へと向う磁界を作り出す。 電気と磁気の基本的関係~①電流はその周囲に磁界を生じる(アンペールの右ねじの法則)、②磁界中を流れる電流は磁界から力を受ける(フレミングの左手の法則)、③磁界の変化はそれを妨げる向きの電圧を生み出す(誘導電流→誘導起電力)。 アンペールの右ねじの法則~右ねじの進行方向が電流の向き、右ねじの回転方向が磁界の向きに対応している。 フレミングの左手の法則~左手の親指、人差し指、中指をそれぞれ直角にした時、中指が電流の向き、人差し指が磁界の向き、親指が力の向きとそれぞれ対応している。 誘導電流~導線でできたコイルを磁界中に置き、コイルに垂直な方向の磁界の大きさを変化させる時、変化を妨げる磁界を生じる電流。 誘導起電力~コイルの周りの磁界を変化させる時、コイルに磁界の変化を妨げる向きに誘導電流を流そうとして、コイルに生じる電圧のこと。 直流モーター~電池で駆動するモーター。2つの磁石にはさまれて、自由に回転できるコイルが置かれている。コイルは整流子を通じて電源と接続されている。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則によって、コイルのN極側とS極側はそれぞれ上下逆向きに力が働き、コイルが回転するが、90°以上回転してコイルが磁界に対して反対向きになると、整流子が電流の向きを反対にする。このため、コイルのN極側とS極側はそれぞれ同じ向きの力を受け続け、コイルは同じ向きに回転し続ける。 交流モーター~交流電源によって動作するモーター。掃除機、洗濯機、電車など、大きな力を生み出すモーターのほとんどは交流モーターであるが、直流モーターと似たような原理で動くものと、誘導モーターと呼ばれる別の原理で動くものとがある。 発電機の原理~直流モーターの回転軸に外から力を加えて回してやると、モーターの電源端子には電圧が生じ、コイルが回転すると、コイルを貫く磁界は変化する。このため、コイルには磁界の変化を妨げるような誘導起電力が生じる。ただし、実際の発電機の多くはコイルではなく、磁石の方が回転する構造になっている。 変圧器(トランス)の原理~変圧器の主役は発電機と同じ誘導起電力であり、変圧器は鉄芯に巻きつけられた2つのコイルからなる。1次コイルに交流電圧をかけて電流を流すと、電流が時間と共に変動するので、変動する磁界を生み出し、変動する磁界は鉄芯を通じて2次コイルに伝わり、誘導起電力を生じる。2次コイルに生じる誘導起電力の大きさは、1次コイルと2次コイルの巻き数の比によって、入力電圧よりも大きくも小さくもなる。 入力電圧と出力電圧の比=コイルの巻き数の比。
① 波の性質 波~振動が次々に周囲に伝わる現象。波動。 波源~波を発生させるもの。 媒質~波を伝える物質。音は空気を媒質とする波であり、光や電磁波は電界と磁界の振動によって生じる波で、空間そのものを媒質として、物質のない真空中でも伝わることができる。波動に伴って物質は移動しないが、媒質の振動のエネルギーが伝えられる。 パルス波~山または谷が1つだけあるような波。孤立波。 連続波~多数の山や谷から出来ている波。 単振動~媒質の振動のうち、最も基本的なもの。 周期~山から山、谷から谷に至るまでの時間。単位は秒〔s〕。 振動数~1秒〔s〕間の振動回数。単位はヘルツ〔Hz〕。 振動数f==周期Tの逆数。 正弦波~媒質が単振動してできる波。任意の時刻における各位置xでの変位の様子が、三角関数の正弦関数(sin関数)のグラフの形をしている。波動の中で最も基本的なもの。 波長~隣り合う山と山、谷と谷の間隔。 波の振幅~波のない時の位置から測った山の高さ(谷の深さ)。 進行波~山や谷の位置が時間と共に移動する波。 波の速さ~山または谷の進む速さ。波は周期T〔s〕の間に波長λ(ラムダ)〔m〕だけ進む。波の速さは媒質とそこを伝わる波の種類(縦波・横波など)によって決まり、その波の振動数や振幅によらない。 V〔m/s〕==fλ。 横波~媒質の各点が波の進行方向と直角に変位し、振動する波。 縦波~媒質が波の進行方向に平行に変位し、振動する波。疎密波とも呼ばれる。 波の重ね合わせの原理~一般に2つの波が同時に来た時の媒質の変位yは、それぞれの波の一方だけが到達した場合の変位をy1及びy2と すると、次のように表される。 y=y1+y2 合成波~重ね合わせてできる波。 波の独立性~出会った波は互いに通り抜けた後、元の波形を保って離れていく。 波の干渉~2つの波が重なり合って、強め合ったり、弱め合ったりする現象。 腹~山と山、谷と谷が重なり合った場所では波は時間と共に大きく振動する。 節(ふし)~腹と腹の中間の所では振動がほとんど起きない。 同位相~1つの波が振動の山の時、もう1つの波も振動の山となっているように、振動の位相(1周期の進行段階を示す量)が同じであること。 逆位相~振動の位相が逆。 腹の線~ある点から波源S1までの距離がL1、S2までの距離がL2である時、腹の線は次のようになる。 (1)2つの波源が同位相で振動する場合:|L1-L2|=・2m=mλ(m=0,1,2,…)を満たす点の集合。 (2)逆位相で振動する場合:|L1-L2|=・(2m+1)=(m+)λ(m=0,1,2,…)を満たす点の集合。 節の線~ある点から波源S1までの距離がL1、S2までの距離がL2である時、節の 線は次のようになる。 (1)2つの波源が逆位相で振動する場合:|L1-L2|=・2m=mλ(m=0,1,2,…)を満たす点の集合。 (2)同位相で振動する場合:|L1-L2|=・(2m+1)= (m+)λ(m=0,1,2,…)を満たす点の集合。 入射波~媒質の端(反射面)に近づいてくる波。 反射波~媒質の端(反射面)から反射して、入射波と反対向きに進む波。 固定端反射~反射面の波のない位置に関して、入射波と点対称で反対向きに進む波を考え、この2つの合成波のうち、反射面から反射する側の部分が実際にできる波と考える。合成波の反射面での変位は常に0のままである。 自由端反射~反射面に関して、入射波と線対称で反対向きに進む波を考え、この2つの合成波のうち、反射面から反射する側の部分が実際にできる波と考える。 定常波~山や谷の位置が時間と共に移動しない波。全く振動しない場所が節、節と節の間で最も大きく振動する場所が腹。固定端に正弦波が入射すると、固定端付近に固定端を節とする定常波ができる。自由端に正弦波が入射すると、自由端付近に自由端を腹とする定常波ができる。 波面~振動がある瞬間に同じ状態になった点を結んだ線。 球面波~波面が波源を中心とする球面になる波。 平面波~波面が平面となる波。特に波面が直線になったもの。 円形波~平面波のうち、波面が円形になったもの。 波の進行方向~波面に垂直な方向。 素元波(そげんは)~波が通過する時に、振動する媒質の各点を新たな波源として生じる球面波。 ホイヘンスの原理~ある時刻の波面上の各点から出る素元波を重ね合わせることで、すぐ次の時刻の波面ができる。 入射角~反射面の法線(反射面に対する垂線)と入射波の進行方向のなす角度。 反射角~反射面の法線(反射面に対する垂線)と反射波の進行方向のなす角度。 反射の法則~入射角=反射角。 屈折波~波の速さが異なる2つの媒質の境界を波が通過し、境界で向きを変えた後の波。 屈折角~屈折波の進行方向と境界面の法線とのなす角度。 屈折の法則~媒質1における波の速さをv1、媒質2における波の速さをv2とする時、入射角iと屈折角rと 間には次のような関係がある。 ==n12(媒質1に対する媒質2の相対屈折率)=一定 波の回折(かいせつ)~波が障害物のかげに回り込み、元の進行方向からそれた方向にも伝わっていく現象。 回折波~回折して進んでいく波。 ②音波 音の三要素~高さ、強さ、音色。 音の高さ~振動数(周波数)によって決まる。人間に聞こえる音(可聴音)の振動数は20~20000Hzである。振動数の大きい音ほど高い音として聞こえ、振動数が2倍になると、音は1オクターブ高くなる。 音の強さ~音波が運ぶエネルギーの大きさ。媒質の密度、振幅、振動数によって決まる。同じ振動数の音では、強い音ほど大きな音に聞こえる。 音色~楽器が作る音波の波形が楽器に固有の複雑な構造を持っているために生じる。 音速~乾燥した空気中の音速V〔m/s〕は温度が高いほど大きく、t〔℃〕の空気中で次のように表される。液体や個体も空気と同じように音波を伝えることができるが、それらの音速は空気よりもずっと大きい。 V=331.5+0.6t 超音波~人間には聞こえない、振動数が2万Hz以上の音。 音波の反射~こだまなど。 音波の屈折~夜になって地表が冷えると、地表付近の温度が下がるのに対して、上空の空気の温度はあまり下がらない。そのため、音速は上空の方が速く、一度上空に出た音波の進行方向が曲げられて遠くの地表に届くため、夜になると遠くの音が聞こえるようになる。逆に昼間は地表付近の温度が上がるため、音波は上向きに屈折させられ、遠方の音は聞こえにくくなる。 音波の回折~音源と観測者の間に障害物があっても、障害物の大きさが音波の波長よりもあまり大きくない場合には、音を聞くことができる。 音波の干渉~2つの音波の山と山(谷と谷)が同時に届く位置では、音波は強め合って大きな音が聞こえ、一方の山ともう一方の谷が同時に届く位置では、2つの音波が常に弱めあうために音が聞こえない。(厳密には密と密、疎と疎の重なった時にちょうど山の数が1つずれるまでの時間がT0であるから、最大、密と疎が重なった時に最小とする。) うなり~振動数がf1、f2の2つの音叉(おんさ)から出る音波の山と山、谷と谷が重なった時に音が最大になり、谷と谷が重なった時には互いに打ち消しあう。うなりの周期 をT0とすると、|f1T0-f2T0|=1となる。 うなりの振動数(1秒間に発生するうなりの回数)f==|f1-f2| ドップラー効果~音源が近づいてくる時には音が高く、遠ざかる時には音が低く聞こえる。また、観測者が音源に近づく時には音が高く聞こえ、音源から遠ざかる時には低く聞こえる。音速V〔m/s〕、振動数f〔Hz〕の音源Sが速さUs〔m/s〕で動く時には、音源から1秒間にf個の波面が出て、1秒前に出た波面はV〔m〕だけ進んだ位置にあるが、その間に音源もUs〔m〕だけ進む。すなわち、止まっている観測者にとっては音速は変わらず、波長が変化するので、音の振動数が変わって聞こえる。 音源の進行方向前方での波長λ1=、後方での波長λ2= 音源の進行方向前方にいる観測者に聞こえる音の振動数f1=== 音源の進行方向後方にいる観測者に聞こえる音の振動数f2=== 固有振動~両端を固定した弦をはじいた時のように、定常波ができる振動。その振動数を固有振動数と言う。定常波の腹の数をnとすれば、一般に弦の長さL〔m〕に波長λn〔m〕 の半分の整数倍でなければならない。腹の数nが1の固有振動を基本振動、nが2、3、…の場合の固有振動をそれぞれ2倍振動、3倍振動と呼ぶ。定常波は弦の両端に向う進行波が両端(固定端)で反射し、お互いに干渉し合ってできたと考えられる。 L=(n=1,2,3,…) λn=(n=1,2,3,…) 固有振動数fn=(進行波の速さV〔m/s〕、n=1,2,3,…) 気柱の固有振動~気柱(細長い管の内部にある空気)の固有振動数も弦の場合と同様にして考察することができるが、両端が固定端である弦と違い、空気が自由に振動できる開口端は自由端なので定常波の腹となり、空気が動けない閉口端は固定端なので節となる。 (1)閉管の振動:閉管の長さL〔m〕、節の数n、固有振動数の波長λn、音速V〔m/s〕、振動数fnとすると、次のようになる。 L=×(n-1)+ λn=L fn==(n=1, 2, 3, …) (2)開管の振動:開管の長さL〔m〕、節の数n、固有振動数の波長λn、音速V〔m/s〕、振動数fnと すると、次のようになる。 L=×n λn=L fn ==(n=1, ,3,…) 共振~外から周期的な力が加わる時、この力の振動数と同じ固有振動数を持つ物体が大きく振動を始める現象。 共鳴~特に空気の振動を引き起こす共鳴。アコースティック楽器など。 ③光波 可視光~目に見える光。光の色は波長によって決まり、赤(真空中での波長が770nm〔ナノメートル〕程度)・橙・黄・緑・青・藍・紫(波長が380nm程度)などがある。多くの光源は様々な波長の光を同時に出しており、それが全ての可視光波長領域にわたる場合には白色光に見える。物体はそれ自体は光を出さず、光源からの光の一部を吸収し、残りを反射したり、透過したりする。目に見えるのはこの反射光、もしくは透過光であり、反射光や透過光の波長によって、物体が何色に見えるかが決まる。例えば、トンネルの黄色いナトリウムランプのように、白色光ではなく、特定の波長の光だけを出す光源の下では、全ての物体が光源の光と同じ色を反射する。 1nm(ナノメートル)=10-9m=10Å(オングストローム) 光の速さ~c=2.99792458×108m/s。ラジオの電波やマイクロ波などの電磁波も真空中を光速で伝わる。 1メートルは1秒のの時間に光が真空中を伝わる行程の長さとして定義される。 反射と虚像~物体の1点から出た光が鏡で反射して目に入る時、鏡から反射してきた光を逆に延長した所にその物体があるように見える。平面鏡によってできる虚像の鏡からの距離は、物体から鏡までの距離に等しい。 屈折と虚像~水の底にある物体が光の屈折により、実際より浅い所(見かけの位置)にあるように見える。 絶対屈折率~光の場合における、真空に対する他の物質の相対屈折率。単に屈折率とも言う。 n12=== 光が速さVで伝わる物質の絶対屈折率n= 媒質1に対する媒質2の屈折率n12= ⇔ n1sin i=n2sin r 光学的距離~光の道筋に媒質を入れることにより、距離が見かけ上、変わったと考えることができる。この見かけの距離を光学的距離、または光路長(こうろちょう)と言う。例えば、光の道筋AB間(距離L)に屈折率n、厚さdの平行平面の媒質を入れた時、AB間の距離が見かけ上、(L-d)+ndに変わったと考えることができる。光路中に物体があっても、光路長が分かれば、光が通過するのにかかる時間やそれが波長何個分に相当するかを容易に知ることができる。 全反射~屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ光が入る時、入射角が大きすぎると光は全て反射される。この時、入射角=反射角となる。例えば、光ファイバーは全反射を応用して、曲った経路に沿って光を送る装置である。 臨界角~屈折角が90°になる入射角。例えば、水中から出た光が空気との境界で全反射する時、空気の屈折率を1、水の屈折率をn、臨界角をi0とすると、次のようになる。 n×sin i0=1×sin90°より、sini0= 偏光~変位の方向が特定の方向にそろった光。このような偏光を作る板を偏光版と言う。 光の散乱~光はちりやゴミなどの細かい粒子にぶつかると、周囲に広がる。 光の分散~いろいろな波長の光を含んでいる光(白色光)をプリズムに当てると、屈折によって波長の違う色の光に分けられる。例えば、虹が見えるのは、太陽光線が空気中の水滴に当たり、水滴中で屈折する際に分散によって7色に分かれるためである。 光のスペクトル~波長ごとに分かれた光の色の模様。 連続スペクトル~太陽や白熱電球の光をスペクトルに分けると、色の帯が見える。 線スペクトル~ナトリウムランプからの光をスペクトルに分けると、細い線状に特定の色が見え、他は暗い。レーザー光は全て線スペクトルである。 光軸(こうじく)~レンズの中心を通っている面に垂直な軸。 焦点~光軸に平行に凸レンズに入射した全ての光が通る点。レンズをはさんで、ちょうど反対の位置にもう1つの焦点があり、ここを通る光線はレンズを通過後、光軸に平行に進む。ここに点光源(大きさを無視できるような小さな光源)を置くと、広がらずに進む平行光線を作ることができる。凹レンズの場合は、光軸に平行に入射した光が屈折後に出て行く光線を反対に延長して、全てが1つに集まる点を凹レンズの焦点と言う。 焦点距離~レンズの中心から焦点までの距離。 実像~実際に光が集まってできる物体の像。 実像の位置と倍率~凸レンズから物体までの距離をa、実像が出来る点までの距離をb、焦点距離をf、物体の大きさを1とした時の実像の大きさmとすると、次のようになる。 (像 倍率) 虚像~実際に光が集まったものではない像。例えば、凸レンズである虫眼鏡の焦点距離よりレンズに近い所に物体を置くと、実際よりも拡大された物体があるように見える。これは実像ではなく、虚像であり、実像と違って倒立していない(正立している)。また、凹レンズでは実像を作ることはできず、凹レンズの焦点より遠方にある物体を見ると、正立した、物体より小さな虚像を見ることができる。 光の回折~光の波長は非常に短いので、あまり顕著な回折を起こさないが、十分に狭いスリット(隙間)を作ると、通った光はスリット幅よりも広がって、ぼんやりした幅の光になって見える。 ヤングの干渉実験~1つのスリット(単スリット)から出た単色光をごく接近した2つのスリット(複スリット)を通して見ると、スクリーン上に明暗のしま模様(干渉じま)が並ぶ。スリットS0から出た光がスリットS1、S2に達し、その後、S1、S2を波源とする円形の波面として広がり、干渉を起こす。スリットS1、S2からスクリーンまでの距離をL、スリットS1とS2との間の距離をd、スリットS1とS2との間の中点からスクリーンに垂線を下ろし、その交点とスクリーン上の点Pとの距離をxと すると、点Pまでの2つの光がたどる光学的距離の差(光路差)は次のようになる。 xやdに比べてLが十分に大きいとすれば、小さい数αに関する近似式≒1+が使える。 光路差=|S2P-S1P|≒ 明線の条件~光路差が波長の整数倍であれば、点Pの位置が明線(干渉じまの明るい部分)になる。 =mλ(m=0,1,2,…) dに比べてLが 十分に大きいとすれば、S1、S2からPまでの光路を平行と見なすことができる。 スリットを通った光線と法線が作る角度をθとする と、sinθ≒ d sinθ=mλ(m=0,1,2,…) 波長の測定~干渉じまの間隔を⊿xとすれば、点Pが⊿xだけ動くと、光路差が1波長分ずれることから波長を測定することができる。 =λ 回折格子~等間隔dで細く溝を刻んだガラス(回折格子)の裏側からガラス面に単色光を当てると、溝の部分では散乱が起こるため、光が通りにくいが、溝以外の部分を通る光は光の位相が全て等しいので、ヤングの干渉実験と同じように、d sinθ=mλ(m=0,1,2,…)を満たす方向に強め合った光が出て来る。多数の波源からの波が重なるので、光の波源が2つだけのヤングの干渉実験と比べて、明線は非常に鋭い。
①運動の表し方 変位~物体が原点からどちらの向きにどれだけ動いたかを示す量。 速度~単位時間の物体の変位。単位はメートル毎秒〔m/s〕。時間t1、t2〔s〕における位置をそれぞれx1,x2〔m〕とすると、物体の変位x2-x1〔m〕と所用時間t2-t2〔s〕との比が平均の速度であり、t2とt1との時間差⊿tをできるだけ小さく取った時、その時間内の物体の変位⊿xとの比を時間t1における瞬間の速度と言う。 平均の速度V=〔m/s〕 瞬間の速度V=〔m/s〕 等速直線運動~一直線上を一定の速さで運動する運動。等速度運動。速度V=V1(時間によらず一定)の場合、時刻t〔s〕までに物体が進む距離x〔m〕は、x=V1tとなる。x−tグラフの傾きは速度を表し、v-tグラフで時刻〔s〕までに進む距離x〔m〕はx軸、y軸、x=t、v=v1で囲まれる部分の面積となる。 相対運動~運動している物体から見た他の物体の運動。 相対速度~相対運動の速度。2つの物体の運動の速度の差。物体Aと物体Bの速度をそれぞれVA,VBとすると、物体Aから見た物体Bの相対速度VAB=VA-VBとなる。 ベクトル~向きと大きさを持った量。合成や分解が可能。速度もベクトルである。 ①速度はのように表し、Vは速さ(速度の大きさ)を表す。 ②向きが反対のベクトルは-のように、元のベクトルに負の符号を付けて表す。 ③大きさがk倍のベクトルはkのように表す。 ベクトルの和~一般に2つのベクトルとを合成したベクトルをと表 す。ベクトルの和を求めるには、とを2辺とする平行四辺形を描き、その対角線ベクトルを取るか、の矢印の終点にを描き、の始点との終点を結ぶベクトルを取ればよい。特にとの大きさが等しく、向きが反対の場合には和のベクトルの大きさは0になり、その場合をと書く。 ベクトルの差~と-の和をと表す。 スカラー~長さや質量のように大きさだけを持つ量。 加速度運動~時間と共に速度が変わる運動。 加速度~単位時間当たりの速度の変化。単位はメートル毎秒毎秒〔m/s2〕。加速度もベクトルである。一直線上を運動する物体の時刻t1〔s〕における速度V1〔m/s〕が時刻t2〔s〕に速度V2〔m/s〕になったとする時、物体の速度差V2-V1〔m〕と所用時間t2-t2〔s〕との比が平均の加速度(V-tグラフにおける直線の傾き)であり、t2とt1との時間差⊿tをできるだけ小さく取った時、その時間内の物体の加速度の変化⊿xとの比を時間t1における瞬間の 加速度(V-tグラフにおけるt=t1での接線の傾 き)と言う。 平均の加速度=〔m/s2〕 瞬間の加速度a =〔m/s2〕 等加速度直線運動~一直上の運動で、加速度が一定の場合の運動。時刻t=0の時の速度(初速度)をV0〔m/s〕、 時刻t〔s〕における速度をV〔m/s〕、一定の加速度a〔m/s2〕 で運動するとして、時刻t=0からtまでに進む距離をx〔m〕とすると、次のような式が成り立つ。 V=V0+at x =V0t+at2 V2- V02=2ax 自由落下運動~重力だけを受けて、静止していた物体(初速度0)が落下する運動。重力加速度g=9.8m/s2として、自由落下運動の速さV〔m/s〕、落下距離y〔m〕は次のようになる。 V=gt y=gt2 鉛直上方投射~速度V0〔m/s〕 で真上に投げた物体の鉛直線上の運動は、鉛直方向をy方 向として上向きを正、投げ上げた点を原点とした時、投げ上げてからt〔s〕 後の物体の位置y〔m〕と速度V 〔m/s〕は次のようになる。 V=V0-gt y =V0t-gt2 水平投射~水平方向に投げ出された物体の運動は、鉛直方向に自由落下する物体の運動と水平方向に等速直線運動する物体の合成となっており、それぞれの方向へ運動を分解することで、速度や位置を求めることができる。 斜方投射~斜めに投げ上げた物体の運動は、水平方向は等速直線運動を行い、鉛直方向は鉛直上方投射の運動を行う。物体の軌跡は放物線となる。 放物運動~水平投射や斜方投射のような、物体の軌跡が放物線を描く運動。 ②力の働き 力の性質~①物体の形を変える、②物体を支える、③物体の運動の様子を変化させる。 力の種類~ばねの力、摩擦力などのように直接触れている物体に働くものや、重力、電気力、磁気力などのように物体と物体が直接触れていなくても作用が及ぶものもある。 重力~地球上の物体が地球から引っ張られている力。 垂直抗力~物体が置かれている面から、垂直で上向きに受ける力。 張力~物体を糸で引く場合、物体が糸から受ける力。 摩擦力~物体と接触面との間に働く、物体の動きを妨げようとする力。 圧力~単位面積の面に働く力。 水圧~水中に置かれた物体のある面が水から受ける力。水深がh〔m〕の時の水圧の大きさ〔単位Pa:パスカル〕は、底面積が1m2、水深がh〔m〕の水柱の重さに等しい。 浮力~水中にある物体が水圧の上下の差によって受ける、鉛直上向きの力。 アルキメデスの原理~浮力の大きさは、物体が排除する液体に働く重力の大きさに等しい。 力の効果~どんな力にも力を及ぼす側と受ける側があり、力の効果は力の大きさと向き、及び作用点(力の作用する場所)によって決まる。 力の表現~力は大きさと向きを持ち、速度と同じくベクトルであり、のように表す。向きが反対の力は-のように負の符号をつけて表す。 力の作用線~作用点を通り、力のベクトルに重ねて引いた直線。 質量~どこで測定しても同じ、てんびんで計る量であり、物質固有の量。単位はキログラム〔kg〕。いわゆる「物体の重さ」とは物体に働く重力のことであり、それは質量に比例する。 力の単位~ (1)ニュートン(記号N)=1Nは質量1kgの物体に働く重力がg〔N〕 (gは重力加速度の大きさ;約9.8m/s2)となるように取り決めた単位で、1kgの物体に1m/sの加速度を生じさせるような力の大きさ。 1N=0.1〔kg〕の物体に働く重力の大きさ (2)kg重(記号kgw)=質量1kgの物体に働く重力の大きさ。 作用・反作用の法則~1つの物体Aが他の物体Bに力を加えている時、必ず物体Bは物体Aに、同じ作用線上で大きさが等しく、向きが反対の力を及ぼす。運動の第3法則。 合力~物体に2力とが働く時、この2力と同じ効果を持つ1つの力。 力の合成~合力を求めること。2力とを2辺とする平行四辺形を作ると、その対角線のベクトルが2力の合力となる。 力の分解~1つの力を、それと同じ効果を持つ2つの力とに分けること。力をx, y方向に分けた力とをそれぞれのx方向、y方向の分力と呼び、その大きさFx,Fyをそれぞれのx成分、y成分と言う。 力のつり合い~1つの物体に2つ以上の力が働いているのに、物質が静止している状態。力がつり合っていると、力全体では物体の運動に対して何の働きもしなくなる。作用と反作用の力がそれぞれ別の物体に働く力であるのに対して、力のつり合いは1つの物体に働く2つ以上の力に対して適用される考え方である。 2力のつり合い~2つの力がつり合っている時、その大きさは等しく、向きが反対で、かつ同一作用線上になければならない。 =- +=(合力0がつり合う条件) 3力以上のつり合い~物体に働く各力の作用が打ち消し合って、その効果は全く力が働かない場合と同じ。 ++= ++…+= 弾性力~ばねを変形させた時、その変形を元に戻そうとして働く力。 弾性変形~ばねに力を加えて変形させた後、力を除くと変形が完全に戻る場合の変形。 塑性(そせい)変形~力を取り除いても、変形が残る場合の変形。 フックの法則~弾性変形では、変形量が小さい時は変形量と弾性力は比例する。ばねの伸び縮みをx〔m〕、弾性力をF〔N〕とすると、次のように表される。 F=kx 比例定数k〔N/m〕=ばね定数 弾性限界~変形量が大きくなって、フックの法則が成り立たなくなる限界のこと。 剛体~大きさを持つ自由体で、しかも変形しない物体。 質点~物体の大きさが十分に小さく、大きさを考える必要がない場合、物体を有限の質量のみを持ち、大きさがないという理想化したものと見なす。 作用線の定理~力の効果は、その作用線上で移動させても変わらない。 力のモーメント~剛体に力が働いている時、力の大きさF〔N〕とある点Oからこの力の作用線までの距離L〔m〕(力の うでの長さと言う)の積FLは、剛体を点Oの周りに回転させようとする能力を表わしている。この積FLを点Oの周りの力のモーメントと言い、反時計回りを正、時計回りを負と約束する。単位はニュートンメートル(記号N・m)。平行で同じ向きの2力が働いている場合、これらの2力の作用線は交わらないので、作用線の定理による力の合成はできないため、力のモーメントの概念が有効である。 力のモーメントの大きさM=FL 平行力の合力~一般に平行力の合成では、向きまで含めてそれぞれの力のベクトル和を合成した力になり、それぞれの力のモーメントの和と合成し た力のモーメントは等しい。平行力, の合力の大きさはF1+F2に等しく、その作用点はL1+L2をL1:L2=F2:F1に内分する点になる。 偶力~物体に回転の効果だけを与える力の組。例えば、大きさが等しく、逆向きの力が剛体に働く時、第3の力を加えて、物体をつり合わせること はできない。偶力については、どの点の周りの力のモーメントの和も、力の大きさFと 2力の作用線の間の距離Lだけによって決まり、FLとなる。 重心~大きさのある物体の各部分に働く重力を合成した力の作用点。物体の1点を糸で吊るす時、糸の張力は物体に働く重力とつり合うから、重心 は糸の張力の作用線上にある。一直線上の座標X1,X2,・・・Xnの位置に質量M1,M2,・・・Mnの質点が分布しているとし、重心の座標をXgとすると、重心の周りのモーメントの和は0となるため、重心の座標は次のようになる。 Xg= 剛体に働く力のつり合いの条件~物体に働く力を, ,・・・ とし、それぞれの力のモーメントをM1,M2,・・・Mnとする時、次の2式が同時に満たされた時のみ、力がつり合う。 (1)++・・・+=~ これのみが満たされている場合は、物体は移動(並進)せずに回転する。 (2)M1+M2+・・・+Mn=0~これのみが満たされている場合は、物体は回転せずに移動(並進)する。 ③運動の法則 慣性の法則~外部から力が働かないか、あるいは働いていてもその合力が0であるならば、静止している物体は静止し続け、運動している物体は等速直線運動(等速度運動)を続ける。運動の第1法則。ガリレオによって発見され、デカルトとニュートンによって修正された。 慣性~運動の状態を持続する性質。惰性。 運動の法則~物体に外から力が働くと、物体には合力と同じ向きに加速度が生じ、その加速度の大きさは、それに作用する合力の大きさに比例し、その質量に反比例する。ニュートンによって発見された。運動の第2法則。 運動方程式~力F〔N〕、質量m〔kg〕、加速度a〔m/s2〕との間の関係は次のようになる。 a= ma=F 運動の3法則~ニュートンは物体の運動を支配する法則を発見し、①運動の第1法則(慣性の法則)、②運動の第2法則(運動の法則)、③運動の第3法則(作用・反作用の法則)、の3法則として整理した。 慣性質量~質量は慣性の大きさを表現する量。 重力質量~質量は物体に働く重力の大きさを表現する量。 静止摩擦力~物体を水平なあらい面(摩擦のある面)に置き、水平方向に引くと、引く力の大きさが小さいうちは物体が動き出さない。この時、面から物体に、面に平行な逆らう力が働いており、この力を静止摩擦力と言う。 最大摩擦力~物体が動き出す限界の摩擦力。最大摩擦力Fmax〔N〕は物体が面から受ける垂直抗力N〔N〕に比例し、比例定数μ(ミュー)を静止摩擦係数と言う。 Fmax=μN 動摩擦力~物体が動き出した後に、物体と面との間に物体の運動を止めようとする向きに働く力。動摩擦力F'〔N〕 の大きさも垂直抗力N〔N〕に比例し、比例定数μ'を動摩擦係数と言う。 F'=μ'N 摩擦角~斜面に置かれた物体に対して、斜面の傾斜角(斜面が水平となす角度)を次第に大きくしていき、物体がすべり始める時の角度。物体の質量をm、摩擦角をθとすると、すべり始める直前では、重力mg〔N〕 の斜面方向の分力mg sinθ〔N〕は最大摩擦力Fmax〔N〕と等しくなる。物体に加わる重力の斜面に垂直な成分はmgcosθ〔N〕であるので、物体は冷めんからこれと同じ大きさの垂直抗力N〔N〕を受けてつり合うのでN=mgcosθ である。 Fmax〔N〕=mg sinθ=μN=μmgcosθ μ==tanθ 終端速度~空気や水の抵抗を受ける運動では、速度が小さいうちは抵抗は小さく、ほぼ自由落下運動になるが、速度が大きくなるにつれて抵抗が大きくなるので加速度は小さくなり、やがて加速度0になった時、物体の速度は一定になる。この一定の速度を終端速度と言い、以後、物体はこの速度で等速度運動をする。
①仕事とエネルギー 仕事~物体に力を加えて動かすこと。力を加えても、力の向きに物体が動かない時は、力が物体にする仕事は0である。 エネルギー~仕事をする能力。 力の向きに物体が移動する場合の仕事~物体に一定の力F〔N〕を働かせて、その力の向きにs〔m〕の距離だけ動かす時、力がする仕事Wは次のようになる。 W=Fs 仕事の単位~ジュール(記号J)。1Nの力で物体を1m動かした時、力は1Jの仕事をしたという。縦軸に力、横軸に距離を取ったグラフを描いた時、仕事の量は一定の力F〔N〕と距離s〔m〕で囲まれる長方形の面積に等しい。 1〔J〕=1〔N・m〕 力の向きに物体が動かない場合の仕事~力の向きが物体の移動の向きと垂直である時(ふりこの糸の張力、斜面をすべり落ちる物体に働く垂直抗力など)も、その力がする仕事は0である。 仕事の正負~力と移動の向きが同じであれば、物体に正の仕事をしたことになり、力と移動の向きが逆であれば、負の仕事をしたことになる。 力と移動の向きが異なる場合の仕事~物体に働く力Fと物体の移動の向きが異なる時、物体が移動する向きに沿った分力のみが仕事をし、移動する向きに垂直な分力は仕事をしない。力Fと移動の向きとの間の角度をθとすると、仕事をする分力はF cosθであり、移動距離をs〔m〕 とすると、この場合の仕事は次のように表される。 W=Fscosθ 2つ以上の力が働く場合の仕事~2つ以上の力が物体に働く場合、それらの合力がする仕事は、それぞれの力がする仕事の和に等しい。 W=(F1cosθ1+F2 cosθ2)s =F1s cosθ1+F2s cosθ2 =W1+W2 仕事の原理~道具(滑らかな斜面、動滑車、てこなど)を使って仕事をする場合、道具の質量や摩擦を無視すれば、必要な仕事は道具を使わない場合に等しく、決して得をすることはない。一般には道具を使って小さな力で物体を動かす場合、逆に移動距離が長くなる。すなわち、どのような道具や機械を使っても必要な仕事またはエネルギーは同じであり、道具や機械によって新しいエネルギーを作り出すことはできない。 仕事率~ある一定時間当たりの仕事の量で表される仕事の能率。時間t〔s〕の間に仕事W〔J〕をする時の仕事率Pは次のように表される。さらに物体に一定の力F〔N〕を加えて、一定の速度v〔m/s〕で距離s〔m〕動かす時、仕事率は次のように与えられる。 P===Fv 仕事率の単位~ワット(記号W)。1sに1Jの仕事をする時、仕事率は1Wである。 1〔W〕=1〔J/s〕 1000W=1キロワット(記号kW) ②力学的エネルギー 運動エネルギー~運動している物体が持っているエネルギー。エネルギーの単位として仕事の単位と同じジュール(記号J)を使う。 運動している物体の運動エネルギー~一般に速さv〔m/s〕で運動している質量m〔kg〕の物体の持つ運動エネルギーEk〔J〕は次のように定義される。 Ek=mv2 物体にした仕事と運動エネルギー~物体の持つ運動エネルギーは外から加えられた仕事と同じ量だけ変化する。質量m〔kg〕 の物体が速さv0〔m/s〕で運動していて、これに一定の力F〔N〕を加えて加速したところ、物体の速度はv〔m/s〕となり、力を加え始めた位置から距離s〔m〕だけ移動したとすると、初めの運動エネルギー+加えた仕事=現在の運動エネルギーとなる。 mv2−mv02=mas=W mv02+W=mv2 位置エネルギー~物体の位置によるエネルギー。 重力による位置エネルギー~重力が働いている空間での位置エネルギー。 物体を持ち上げるための仕事と位置エネルギー~質量m〔kg〕の物体を基準面からh〔m〕だけ重力にさからって持ち上げるために必要な外力Fがする仕事W〔J〕は次のようになる。これは高さh〔m〕の位置にある物体の重力による位置エネルギーEpに等しい。位置エネルギーを測る時の基準面は任意に決めることができ、物体の位置が基準面より低い時には高さh〔m〕は負符号となり、位置エネルギーも負符号となる。 W=Fh=mgh=Ep 弾性エネルギー~ばねの持つ弾性力による位置エネルギー。ばねの力はフックの法則により、F=kx(k〔N/m〕はばね定数)であり、ばねを自然長からx〔m〕伸ばす時の仕事は次のようになり、これはばねに蓄えられた弾性エネルギーEpに等しい。 W=kx2=Ep 保存力~物体をA点からB点まで動かす時、力のする仕事が経路に関係なく、2点の位置だけで決まるような場合の力。重力やばねの弾性力は保存力であり、摩擦力や空気の抵抗などは物体を動かす経路の長さによって異なるので、保存力ではない。 力学的エネルギー~運動エネルギーと位置エネルギーの和(Ek+Ep)。 力学的エネルギー保存の法則~保存力だけが仕事をする物体の運動では、力学的エネルギーは一定に保たれる。 A地点での力学的エネルギー(EkA+EpA)=B地点での力学的エネルギー(EkB+EpB) ふりこの運動と力学的エネルギー保存~ふりこの運動では糸の張力が働き、その向きは常におもりの運動方向と垂直なので、仕事をしない。したがって、常に力学的エネルギー保存の法則が成り立つ。 ばねの弾性エネルギーと力学的エネルギー保存~ばねの弾性力も保存力なので、ばねの力が働く場合も力学的エネルギー保存の法則が成り立つ。 外からの仕事と力学的エネルギー~物体に保存力以外の力が外部から働く時、この力が正の仕事をする場合にはその力学的エネルギーは増加し、負の仕事をする場合にはその力学的エネルギーは減少する。 摩擦力と力学的エネルギー保存~物体が摩擦のある斜面をすべる時、位置エネルギーが減少する分だけ運動エネルギーは増加せず、その差は摩擦熱となってしまう。このように、摩擦力などの保存力以外の力が働く場合には力学的エネルギーは保存されないが、摩擦熱として失われたエネルギーも含めると、全エネルギーが保存されている。 ③熱とエネルギー 摂氏温度~セルシウス温度(記号〔℃〕)。1気圧の下で、氷が溶けて水になる温度を0℃、水が沸騰して水蒸気になる温度を100℃とし、その間を100等分したもの。 絶対温度~単位はケルビン(記号K)。セルシウス温度t〔℃〕と絶対温度T〔K〕の関係は次のように表される。1K の温度差は1℃の温度差に等しい。 T=t+273 絶対0度~-273℃=0K。これ以下の温度は存在しない。 固体~氷のように固い状態。分子同士が決まった位置にあり、その位置から大きく動かず、外形が決まっている。 液体~水のような状態。分子はある程度自由であり、外形が決まっていない。 気体~水蒸気のように密度が小さい状態。分子は自由に飛び交って、体積は非常に大きくなっている。 熱運動~温度に関連した原子や分子の乱雑な運動。 熱の移動~温度の異なる2つの物体が接触すると、熱運動のエネルギーは温度の高いものから低いものへ流れる。 熱量~温度差のある2つの物体の間に流れた熱の大きさ。熱はエネルギーの流れであるから、ジュール〔J〕を単位として表す。水1gの温度を1K上昇させるのに必要な熱量を1カロリー(記号〔cal〕)と呼び、1cal≒4.2Jである。 熱容量~ある物体を1K上昇させるのに必要な熱量。単位はジュール毎ケルビン(記号〔J/K〕)。 比熱~ある物質1g当たりの熱容量。単位はジュール毎グラム毎ケルビン(記号〔J/g・K〕)。比熱c〔J/g・K〕、質量m〔kg〕の物体の熱容量をC〔J/K〕とすると、次のようになる。また、物体の温度が⊿T〔K〕だけ上昇するために必要な熱量Q〔J〕は次のようになる。 C=mc Q= mc⊿T 熱平衡~温度の違う2つの物体の間で熱の移動が起こり、温度が等しくなった状態。 熱量の保存~温度の違う2つの物体の間で熱の移動が起こり、熱平衡に達した時、温度の高い物体から流れ出る熱量と温度が低い物体に流れ込む熱量が相等しいこと。 気体の圧力~気体が単位面積当たりを垂直に押す力。面積S〔㎡〕を気体が力F〔N〕で垂直に押す時、圧力P〔N/ ㎡〕は次のようになる。 P= 圧力の単位~パスカル(記号〔Pa〕)。1㎡の面積に1Nの力が働く時の圧力を1Paとする。 1〔Pa〕=1〔N/㎡〕 大気圧~1気圧(記号〔atm〕)≒1.013×105Pa=1013hPa 100Pa=1ヘクトパスカル(記号〔hPa〕) ボイルの法則~温度が一定の時、気体の体積は圧力に反比例する。圧力をp〔Pa〕、体積をV〔㎥〕とすると、次のような関係が成り立つ。 pV=一定 定圧過程~圧力を一定にしたまま、気体の温度や体積を変化させる過程。 定圧変化~定圧過程における気体の状態変化。 シャルルの法則~気体の体積は絶対温度に比例する。摂氏0℃での気体の体積をV0とすると、t〔℃〕=T(273+t)〔K〕における気体の体積Vは次のようになる。 V=V0(1+t)=V0 = 一定 理想気体~ボイルの法則やシャルルの法則が成り立つ気体。例えば、絶対0度(T=0)では気体の体積は0となるはずだが、実際にはその前に液体や固体に変化するように、現実の気体では近似的に成り立つだけである。 内部エネルギー~物質を形作っている原子や分子が持っている、熱運動による運動エネルギーや分子間や原子間の力による位置エネルギーの和。物質の力学的エネルギーが0であっても、それぞれの物質は内部エネルギーを持っている。 熱と内部エネルギー~物質が熱を吸収すると、熱運動が活発になって内部エネルギーが増加し、逆に物質が熱を放出すると、内部エネルギーが減少する。特に気体の場合は、分子間の力による位置エネルギーは無視できるので、内部エネルギーは気体分子の熱運動の運動エネルギーの和である。 仕事と内部エネルギー~気体などの物質に外部から仕事をすることによって、内部エネルギーを増加させることができる。 熱力学第1法則~気体に与えた熱量と仕事の和は、気体の内部エネルギーの変化に等しい。外部から気体にした仕事をW〔J〕、外部から加えた熱をQ〔J〕とすると、気体の内部エネルギーの増加⊿U〔J〕は次のようになる。外部から熱を与えて気体が膨張し、外部に仕事をする場合はWは負となる。 ⊿U=W+Q 断熱過程~熱の出入りを遮断したまま、気体などの物質の温度や状態を変える過程。 断熱変化~断熱過程における物質の状態変化。気体を断熱圧縮させると(W>0)、 気体の内部エネルギーは増加し、気体を断熱膨張させると(W<0)、 体の温度は下がる。 ④電気とエネルギー 電荷~原子核や電子など、帯電した物体(帯電体)が持っている電気。 電気量~電荷の量。単位はクーロン(記号〔C〕)。 電気素量~電子の電気量の絶対値。e=1.6×10-19C。 静電気力~電荷の間に働く力。電荷の大きさに比例して強くなる。電子の負電荷の総量と原子核の正電荷の総量は等しく、普通の状態の物質では総 電気量は0で、電気的に中性である。 自由電子~原子から離れて自由に動ける電子。 電流~電子の流れ。 導体~金属のように、電流の流れる物質。 不導体~絶縁体。ゴムやアクリルのように、自由電子がなく、電流が流れにくい物質。 電流の向き~正の電荷が動く向き。負の電荷を持つ電子の動く向き(自由電子は電池の負極から正極の向きに移動する)とは逆向き。 電流の大きさ~導体の断面を単位時間に通過する電荷の量。単位はアンペア(記号〔A〕)。1s間に1Cの電荷が流れる時、1Aの電流が流れるという。時間t〔s〕の間dに総電気量Q〔C〕が流れる時の電流I〔A〕は次のようになる。 I= オームの法則~電流の大きさIは電圧Vに比例する。電圧を上げると電流が大きくなるのは、導体内の自由電子に働く静電気力が強くなって、電子の速度が速くなり、単位時間に流れる電子の総量が増加するためである。物体が斜面をすべる場合に対応させると、電流I〔A〕は物体の斜面をすべる速度に対応し、電圧V〔V〕は斜面の高さに相当する重力の位置エネルギーの差に対応し、電気抵抗R〔Ω〕は斜面の摩擦力などの抵抗力に相当し、電気量q〔C〕は物体の質量m〔kg〕に対応する。 I= 静電気力~電荷の受ける静電気力は電荷の大きさに比例する。q〔C〕の電荷が受ける力F〔N〕は、1Cの電荷(単位電荷) 当たりに働く力の大きさEを使って、次のように表される。 F=qE 電界~電場。電荷に静電気力を及ぼす空間。2つの電荷同士は離れていても力を及ぼし合うことから、電荷を持った物体の回りの空間は、他の電荷に力を及ぼす性質を持つ空間に変化していると見なされる。 電界の強さ~単位はニュートン毎クーロン(記号〔N/C〕)。 電界の向き~正電荷に働く静電気力の向きで定義される。 電荷と仕事~電圧V〔V〕が加えられた2点間を電荷q〔C〕が移動する時、静電気力は仕事をし、その仕事量W〔J〕は電荷が移動する前に持っていた静電気力による位置エネルギーに等しい。1Vの電圧の間を1Cの電荷が移動すると、静電気力は1Jの仕事をする。 W=qV 1〔V〕=1〔N/C〕 電気抵抗~電流の流れにくさ。導体中の自由電子が電界から静電気力を受けると、自由電子は加速され続け、電流は増え続けるはずであるが、実際には電子は導体内の正イオンと衝突して、その度に電界から得た運動エネルギーを失って減速する。この減速の効果が電気抵抗の原因である。導線の電気抵抗R〔Ω〕は断面積S〔㎡〕に反比例し、長さL〔m〕に比例するので、比例定数ρ(ロー)を用いて次のよう に表される。 R=ρ(比例定数ρは 抵抗率) 抵抗率~単位はオーム・メートル〔Ω・m〕。物質の種類や温度によって異なる。 抵抗率の温度変化~金属の抵抗率は温度が上がると増加し、温度が0℃の時の抵抗率をρ0〔Ω・m〕とす ると、温度t〔℃〕の時の抵抗率は次のように表され る。 ρ=ρ0(1+αt)(αは抵抗率の温度係数) 抵抗率の温度係数~温度が1℃上昇した時の抵抗の上昇率。 ジュール熱~導体中を電流が流れる時に発生する熱。導体内で電界によって加速された電子は導体内の正イオンと衝突し、運動エネルギーを失うが、正イオンは逆に自由電子から運動エネルギーを受け取って、その熱運動が激しくなり、温度が上がる。電熱器や白熱電球はこのジュール熱を用いている。 ジュールの法則~抵抗R〔Ω〕の導体の両端にV〔V〕の電圧を加えて、I〔A〕の電流をt〔s〕間流す時、移動する電荷はq=It〔C〕であるから、電荷がされる仕事はW=qV=IV tであり、これが全てジュール熱になる場合、発熱量は次のように表される。 W=qV=IV t=I2R t=t 電力~消費電力。単位時間当たりに変換する電気エネルギー。単位はワット〔W〕。電力Pは次のように表される。これは仕事率に対応する。 P=IV=I2R = 電力量~ある時間に利用した電気エネルギーの総量。単位はジュール〔J〕。キロワット時(記号kWh)という単位を使うこともあるが、これは1kWの電力を1時間使った時に消費されるエネルギーである。電力量Wは 次のように表される。 W=IV t ⑤エネルギーの変換と保存 化学エネルギー~化学反応に伴うエネルギー。 核エネルギー~原子核エネルギー、原子力エネルギー。原子核を一つにまとめているエネルギー。このエネルギーを取り出す方法の1つとして、ウランなどの重い原子核を分裂させる核分裂反応があり、核分裂が生じた後にそのエネルギーの一部が熱エネルギーに変換されるので、これを原子力発電に利用することができる。 太陽のエネルギー~太陽の中心部では水素などの原子核が融合する反応(核融合反応)が起きていて、原子核エネルギーを発している。日本の夏で1㎡当たりに約1kWのエネルギーに及ぶ。太陽エネルギーは植物の光合成によって化学エネルギーに変換され、植物を成長させる。 水のエネルギー~水力発電所はダムの下流に建設され、水のエネルギーを電気エネルギーに変えている。降雨をもたらし、水の流れを作るのは太陽エネルギーである。 風のエネルギー~風力タービンなどで発電に使われる。風のエネルギーは太陽エネルギーの一部が大気に吸収されて、空気の運動エネルギーになったものである。 エネルギーの変換~エネルギーが形態を変えること。エネルギーが変換される過程には、その逆の過程が起こるものとそうでないものとがある。 エネルギー保存の法則~どのような変換が起きても、エネルギーの総量は常に一定である。これは物理学で最も基本的で重要な自然法則であり、例えば力学的エネルギー間のみの交換では力学的エネルギー保存の法則となる。 可逆過程~外部に変化を残さず、逆の過程が存在する過程。例えば、ふりこが最高点で持つ位置エネルギーは最低点では運動エネルギーに変換され、ふりこがさらにふれて最高点に達すると、それは再び位置エネルギーに戻っている。 不可逆過程~逆過程の存在しない過程。熱に関連した現象は全て不可逆過程である。一般に、外部からエネルギーを与えない限り、不可逆過程では熱を含めた全エネルギーは保存されながら、秩序ある状態から平均化した無秩序な状態へ移行する方向に進行する。例えば、温度の違う2つの物体を接触させておくと、熱平衡になって同じ温度になるが、熱平衡にある同じ温度の2つの物体を接触させておいても、これらの物体の温度が異なる状態に変わることはない。あるいは、摩擦のある面で運動する物体は、その運動エネルギーを摩擦のために熱として失い、最終的に止まるが、逆に物体は熱を吸収しても、元の速さで動き出すことはない。 熱機関~熱を仕事に変える機関。蒸気機関や自動車のエンジンなどの熱機関では、石炭やガソリンを燃やして熱エネルギーを得て、これを力学的な仕事に変える。こうした高温熱源から低温熱源へ熱を移動させて力学的仕事を取り出す機関のみならず、冷蔵庫や冷房機、ヒートポンプのように、熱機関を逆に動かして外から仕事を与えて、熱を低温熱源から高温熱源へ移動することもできる。高い温度T1〔K〕の熱源からQ1〔J〕の熱を取り、低い温度T2〔K〕の熱源へQ2〔J〕の熱を放出したとすると、この時に取り出した仕事W〔J〕は次のようになる。 W=Q1-Q2 熱機関の効率~熱効率。最初の熱エネルギーのうち、仕事として取り出せるエネルギーの割合。例えば、自動車のガソリン・エンジンの熱効率や約30%である。 e=×100〔%〕=×100 〔%〕 熱力学第2法則~熱は全て仕事に変換することはできない。熱効率が100%にはならないことを言う。 第1種永久機関~エネルギーを与えなくても永久に仕事をし続ける機関。熱力学第1法則(外から吸収する熱や加えられた仕事が内部エネルギーとして蓄えられる)に反しているので、作ることができない。 第2種永久機関~1つの熱源から熱を取り、全て仕事に変換する機関。熱力学第2法則に反しているので、作ることができない。 【高卒認定物理の問題構成】 (1)電気 ①電気と生活~生活を支える電気 ②電気と磁気~モーター、発電機 ③情報を伝える電気~交流、電波 (2)波動 ①波の性質~波の伝わり方、反射の法則、屈折の法則 ②音と音波~音の伝わり方、音の干渉と共鳴 ③光と光波~光の伝わり方、光の回折と干渉 (3)運動 ①運動の表し方~等速直線運動、等加速度直線運動 ②力の働き~力の合成と分解、力のつり合い ③運動の法則~運動の第1法則、運動の第2法則、運動方程式 (4)エネルギー ①仕事とエネルギー~仕事の原理、仕事率 ②力学的エネルギー~運動エネルギー、位置エネルギー、力学的エネルギー保存の法則 ③熱とエネルギー~熱と温度、熱と仕事、内部エネルギー ④電気とエネルギー~電流、電界と仕事、オームの法則と電気抵抗、ジュール熱、電力量と電力 ⑤エネルギーの変換と保存~いろいろなエネルギー、エネルギーの変換と保存の法則、熱機関の効率 ページのトップへ戻る
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