高卒認定試験合格のためのポイント

 全科目一発合格も決して夢ではありません。要は「情報」なのです。そのポイントは以下の3つに集約されます。

(1)科目の選び方

 科目の選び方を間違えると負担が増えたり、その後の進路との兼ね合わせでムダが生じたりします。「最も負担が少なく、かつその後の進路につながる組合せ」を知らないと、勉強の進度に大きな差がついてしまいます。具体的には社会と理科の選び方ということになってきます。その詳細は(2)勉強の仕方の所で説明いたします。
 さらに文系大学受験者であれば、国語(現代文・古文まで)・社会(日本史か世界史かどちらか好きな方)・英語の3科目、理系大学受験者であれば、数学(まず数ⅠA・数ⅡBを固め、典型的理系なら数Ⅲまで必要)・理科(化学が便利。典型的理系なら物理も必要。薬学・農学・獣医・バイオ系の人で化学の代わりに生物を選択することもあり得ます)・英語の3科目が必要になってくるので(私立大のほとんどはこの3科目で対処できます)、これらの3科目に関しては高卒認定試験というよりも、大学受験の基礎勉強をもう始めているという意識で臨んだ方がムダがありません。

(2)勉強の仕方

(1)国語=現代文は勉強の必要がないぐらいで(明らかに間違いの選択肢が出てくるので、余り迷いようが無い)、過去問を最後にラッシュでこなしていけば、十分満点近くが狙え(つまり50点)、古文・漢文はできなくても合格はできます。古文・漢文では漢文の方が簡単なので、念には念を入れるとしたら漢文に力を入れた方が、短期間で仕上がります。しかし、大学受験まで考えている人にとっては話が変わってきます。文系では必須科目であり、現代文で論理的思考の基礎を徹底的に訓練し、古文の基礎をきっちり押さえておく必要があります。
(2)世界史・日本史=独学すると、直前になって最もハマりやすい科目です。覚えることが余りにも膨大に思えて、絶望的になってしまうからです。これにはポイントを絞って骨格をまず押さえることが重要で、それだけならそれほど時間はかかりません。ただ、この「絞り込み」が一人ではできないところで、予備校・塾・家庭教師の授業を受ける意味があるところです。さらに反復回数を増やして肉付けをして、最後に過去問演習で仕上げをしていけば終わりです。文系大学受験者はいずれかを選択して受験するケースがほとんどなので、高卒認定試験の勉強をしながら早目に骨格をつかんでおくと、その後の勉強がスムースになります。
(3)地理=地歴系科目の中では覚える内容が最も少なくて済みます。世界史、政治・経済、地学とリンクする分野もあり、効率的な面もあります。ただ検定教科書が使い物にならないので、なるべく簡単な参考書を使って基礎知識の整理を行い、その後に過去問演習で補強・肉付けをしていく必要があります。
(4)現代社会=政治・経済は比較的難しい面があるものの、基本を押さえれば分かる範囲です。グラフ・表の読み取りもよく出ますが、これは予備知識ゼロで解けるものなので、準備不要です。しかし、社会・時事が随所に織り込まれているので、これについては日頃から新聞に目を通しておく必要があり、新聞を読む習慣や、そういった知識をまとまって教わる場が欲しいところです(独学ではまず難しい)。倫理はオーソドックスな常識の範囲を出ないので、基本を押さえれば得点源でしょう。
(5)数学=公式を理解し、暗記するのが第一段階。問題として出やすいパターンに慣れるのが第二段階なので、基本を押さえたら問題演習を重ねる必要があります。暗記系科目とは違い、感覚として身につくまでに時間がかかるという点で、短期間で仕上げたり、独学で何とかするということがやりづらい面があります。英語と共に個人差、理解力の差が激しく、「分かっている人に教えてもらった方が早い」科目の代表格です。
(6)科学と人間生活=中学校の理科の延長にある科目です。生物、科学、物理、地学の4分野を含みますが、内容は簡単です。参考書がほとんどないので検定教科書で必要事項を覚え、過去問は理科総合を使って仕上げていきましょう。科学と人間生活に地学基礎、生物基礎のいずれかを選んで2科目とするのがベストでしょう。
(7)地学・生物=化学・物理になると段々数学に近くなってくるので、知識を積み上げて体系的に理解する必要が出て来ます。したがって、化学・物理は短期決戦向きではなくなりますが、地学・生物は暗記科目なので、基本概念・用語を押さえれば、あとは問題演習・過去問演習で十分です。特に地学は高校で全然学んだことが無い人でも、気象・地層・火山・地震など日頃からニュースなどで触れる機会も多い内容です。ただ、国公立大学志望者、理系大学志望者、公務員受験希望者などは地学よりも化学を選択した方が現実的です。
(8)英語=語学系科目は短期間で仕上げることには無理があり、高卒認定試験だけならあまりできる気がしなくても合格は可能ですが、大学受験にはギャップがあります。文法・単語を地道に押さえ、文章に読み慣れしていくという作業を早目にやればやるほど有利になります。英語は将来ますます必要になりこそすれ、不要になることはまずあり得ませんから、苦手な人ほど早く始めるべきです。特に大学受験では英語のレベルでランクが上下すると言っても過言ではありません。

(3)科目免除の仕方

 高校を1年以上修了しておられる方は、「単位修得証明書」(封印されているので、2通発行してもらい、1通は高卒認定願書申請用に取って置き、もう1通を内容確認のために開封します)を発行してもらい、免除科目を確認します。一般的に1年修了者であれば2~5科目、2年修了者であれば5~7科目くらい免除がされるので、すぐに高校で発行してもらって現状確認をすることが必要です。
 さらに技能審査を使うことができ、数検、英検、歴検などが挙げられます。あらかじめ取得しておけば免除に使えますし、万一、高卒認定試験当日に体不調でいくつか落としたとしても、後で取得してカバーできる可能性が出てきます。
 また、8月の高卒認定試験が終わった時点で1~2科目残っている状態であるならば、通信制高校の聴講生制度を使って安い学費で3月までに単位を揃えることが可能になるので、すぐに次の進路の準備に入ることが可能です。通信制高校より「単位修得見込証明書」を発行してもらい、それと「科目合格通知書」を文部科学省へ送れば、「高卒認定試験合格見込証明書」を発行してくれますから、9~12月に集中する大学推薦入試も受験することができるようになります。したがって、1回目の8月試験で不合格科目があった場合、①11月の2回目試験に向けて準備する、②通信制高校の聴講生制度を利用して「掛け捨て保険」をかける(もちろん、高1相当、高2相当の方はそこまでする必要がありません。全科目合格してもすぐ次の進路に移ることができないからです)、という2つの方法を取ることが可能になります。ただ、通信制高校の授業では大学受験に必要な学力はまずつきません。あくまでも単位を取るために利用するというのが、時間的・経済的・労力的に負担の少ない活用の仕方となります。

(4)過去問について

高等学校卒業程度認定試験問題(高卒認定試験) 解答・過去問題:文部科学省 (mext.go.jp)